精神医療の外側にも存在する"パラノイア"の問題 『パラノイア』『日銀総裁のレトリック』など書評3点

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『パラノイア 極度の不信と不安への旅』

・『日銀総裁のレトリック』

・『IOWNの正体 NTT限界打破のイノベーション』

『パラノイア 極度の不信と不安への旅』ダニエル・フリーマン 著
『パラノイア 極度の不信と不安への旅』ダニエル・フリーマン 著/高橋祥友 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・精神科医 熊代 亨

不安や体調不良が続いているとき、「周囲に悪く思われているかも」「差別されているかも」と他人を疑ってしまったことはないだろうか。本書は、誰しも経験しうる猜疑心から統合失調症などによる重篤な妄想までを連続性のあるスペクトラムとみなし、それらをまとめて“パラノイア”と呼んでいる(長らく、パラノイアという言葉は統合失調症の症状や妄想性障害を指す言葉として用いられてきたから、精神医療従事者にはかえって読みづらいかもしれず、注意が必要だ)。

精神医療の外側にも存在する“パラノイア”の問題を指摘

著者らがコロナ禍の最中に行った調査では、被検者の半数が少なくとも1つの陰謀論を信じていた。また、2023年に行われた調査では、3分の1以上の被検者が誰かが自分たちに害をもたらそうとしていると回答し、4分の1以上の被検者が誰かが自分たちを傷つけようとしていると回答した。精神医療の対象とみなされる重篤な患者の外側にもパラノイアは幅広く存在し、医療的のみならず社会的にも大きな問題である、というのが著者の指摘である。

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