
[Book Review 今週のラインナップ]
・『疫禍動乱 世界トップクラスのワクチン学者が語る、Covid-19の陰謀・真実・未来』
・『イノベーションの科学 創造する人・破壊される人』
・『目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと』

『疫禍動乱 世界トップクラスのワクチン学者が語る、Covid-19の陰謀・真実・未来』ポール・A・オフィット 著/関谷冬華 訳/大沢基保 日本語版監修(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
評者・医療社会学者 渡部沙織
著者は感染症や免疫学を専門とする小児科医である。コロナ禍では米国のテレビネットワーク局から連日説明を求められた。勤務する小児病院では、重症化して呼吸困難に陥り搬送されてくる子どもたちへの対応に打ちのめされる日々が続いたという。
「正しい選択」が存在しないコロナ禍を今ふりかえる
19年末の中国・武漢での症例発生に端を発し、世界中が巻き込まれた新型コロナ対策には、複雑な光と陰がある。
光の側面は、1年というにわかに信じがたいスピードで有効なmRNAワクチンが開発されたことだ。著者は2006年に米国で承認されたロタウイルスワクチンの開発者として知られているが、その開発には26年間の歳月を要している。陰の側面は、公衆衛生対策と社会との衝突によって、専門家と市民の信頼関係が毀損したことだ。今となっては、SNSに渦巻くコロナ対策に関する陰謀論を止める手立てすらない。
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