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〈書評〉『秩序崩壊 21世紀という困難な時代』『米中戦争を阻止せよ』『人類5000年の名建築をめぐる旅』

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『秩序崩壊 21世紀という困難な時代』

・『米中戦争を阻止せよ トランプの参謀たちの暗闘』

・『人類5000年の名建築をめぐる旅』

『秩序崩壊 21世紀という困難な時代』ヘレン・トンプソン 著
『秩序崩壊 21世紀という困難な時代』ヘレン・トンプソン 著、寺下滝郎 訳、中野剛志 解説(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

国際制度といえば、国際政治や国際金融を思い浮かべる人が多いだろう。本書は、そうした国際制度が機能するには、地理的に偏在するエネルギー基盤の安定が不可欠だと明らかにする。大西洋を挟む米欧の金融、エネルギー、民主主義──。3つの絡み合う歴史を整理し、1970年代以降それらの正統性がいかに損なわれ現在の世界的混乱を招いたかを分析する。

国外へのコスト押し付け 再分配できない米国の事情

東洋経済オンラインの愛読者に読んでほしい本を一気に紹介。【土曜日更新】

本書の眼目は、制度が社会を統合する秩序であるためには地政学的制約や国内の再分配とも整合する必要がある、という点だ。制度は単なるルールの寄せ集めではない。国際金融には国家間の信認とそれを支える国内的正統性、エネルギーには輸送経路や供給源の安定性、民主主義には敗者が納得する意思形成の仕組みが必要だ。

著者は71年のブレトンウッズ体制崩壊を転機として描く。当時のニクソン米大統領が金と米ドルの交換停止を発表。金の裏付けなき国際通貨へ変質したドルは、急激な膨張で金融部門に巨利をもたらすが、それを支える国内の信認と分配構造は徐々に空洞化する。

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