[Book Review 今週のラインナップ]
・『日本銀行 虚像と実像 検証25年緩和』
・『民主主義の危機 比較分析が示す変容』
・『心を軽やかにする 小林一茶名句百選』
・『経済の流れと仕組みでわかる 人類の1万年史』
評者・上智大学准教授 中里 透
「復活だ!」。日本語に訳すとそんなフレーズから始まるポール・クルーグマンの論文が公刊されて25年が経つ(当時は米マサチューセッツ工科大学教授)。そこでは、バブル崩壊後、経済の低迷に苦しむ日本がどうすれば「流動性の罠」から脱出できるかが詳細に論じられた。
大胆な金融緩和を提唱するこの論文は、速水優総裁と福井俊彦総裁の下での「時間軸政策」につながる構想のアイデアとして、また、黒田東彦総裁の下での異次元緩和を支える理論的支柱として、日本銀行の金融政策の運営に大きな影響を与えてきた。
98年「中銀の独立性」を獲得 日銀の金融政策運営を振り返る
今から25年前、1998年は、日銀にとっても特別な年だ。同年4月の新日銀法施行により、長年の悲願だった「中央銀行の独立性」を手にしたからだ。
もっとも、当時は金融システムの不安定化に見舞われ、デフレの中にあって独立を祝う余裕はなく、速水日銀は「海図なき航海」を続けざるをえなかった。本書はこの特筆すべき年、98年を起点に日銀と金融政策のこれまでの歩みを丁寧に描いている。
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