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建国の理念をも否定する新右翼、米国社会に根本的な変容の可能性/『アメリカの新右翼』井上弘貴氏に聞く

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『アメリカの新右翼 トランプを生み出した思想家たち』著者の井上弘貴氏
[著者プロフィル]井上弘貴(いのうえ・ひろたか)/神戸大学大学院 国際文化学研究科教授。1973年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程満期退学。博士(政治学)。専門は政治理論、公共政策論、アメリカ政治思想史。著書に『ジョン・デューイとアメリカの責任』『アメリカ保守主義の思想史』。(撮影:尾形文繁)
第2次トランプ政権下の米国では、「新しい右派」が社会全体に大きな影響を及ぼしている。本書は複雑な右派の潮流を丁寧に腑分(ふわ)けし、代表的な思想家や論客、政治家の面々を紹介しながら、米国の未来を展望する。
アメリカの新右翼:トランプを生み出した思想家たち (新潮選書)
『アメリカの新右翼:トランプを生み出した思想家たち (新潮選書)』(井上弘貴著/新潮選書/1705円/208ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──本書では、米国で台頭している新しい右派の潮流を「第3のニューライト」と位置づけています。

戦後1950年代半ばに台頭した第1のニューライトは、ニューディール政策を批判した戦前のオールドライトを継承し、個人の自由とキリスト教的価値を重視した。オールドライトとの違いは冷戦下の対外認識。孤立主義のオールドライトに対して、ニューライトは反共主義と連動した介入主義に傾いた。第2のニューライトは60〜70年代に、公民権運動に象徴される解放的な世俗化への反動として登場した。そして2010年代以降、ポリティカルコレクトネスや多様性への反発から、第3のニューライトという新しい右派が存在感を示している。

第3のニューライトの大きな特徴は、反リベラルというだけでなく、建国の理念である古典的自由主義に対しても否定的な点だ。とくに彼らの中核を成す「ポストリベラル右派」という潮流は、個人の自由や権利を批判し、キリスト教的価値や道徳を社会の基盤として再構築すべきだと主張している。これは建国の礎自体に疑問を投げかけるもので、旧来のニューライトや保守とは一線を画す。

──政治学者のパトリック・J・デニーンと起業家のピーター・ティールを大きく取り上げています。それだけ2人の影響力や存在感が大きいということでしょうか。

いま話題になっている本の著者に、じっくりとインタビュー。【日曜日更新】

背景も立場もまったく異なる両者が、「第3のニューライト」を形成する2つの柱のように機能している。デニーンはポストリベラル右派を理論的に構築した中心人物だ。J・D・ヴァンス米副大統領に影響を与えていることでも知られる。著書『リベラリズムはなぜ失敗したのか』(邦題)が注目されたが、彼の主張や影響力はまだ十分に日本国内に伝わっていない。デニーンの思想を深く理解することで、今の米国政治の動きがより鮮明に見えてくるはずだ。

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