
──本書では、米国で台頭している新しい右派の潮流を「第3のニューライト」と位置づけています。
戦後1950年代半ばに台頭した第1のニューライトは、ニューディール政策を批判した戦前のオールドライトを継承し、個人の自由とキリスト教的価値を重視した。オールドライトとの違いは冷戦下の対外認識。孤立主義のオールドライトに対して、ニューライトは反共主義と連動した介入主義に傾いた。第2のニューライトは60〜70年代に、公民権運動に象徴される解放的な世俗化への反動として登場した。そして2010年代以降、ポリティカルコレクトネスや多様性への反発から、第3のニューライトという新しい右派が存在感を示している。
第3のニューライトの大きな特徴は、反リベラルというだけでなく、建国の理念である古典的自由主義に対しても否定的な点だ。とくに彼らの中核を成す「ポストリベラル右派」という潮流は、個人の自由や権利を批判し、キリスト教的価値や道徳を社会の基盤として再構築すべきだと主張している。これは建国の礎自体に疑問を投げかけるもので、旧来のニューライトや保守とは一線を画す。
──政治学者のパトリック・J・デニーンと起業家のピーター・ティールを大きく取り上げています。それだけ2人の影響力や存在感が大きいということでしょうか。
背景も立場もまったく異なる両者が、「第3のニューライト」を形成する2つの柱のように機能している。デニーンはポストリベラル右派を理論的に構築した中心人物だ。J・D・ヴァンス米副大統領に影響を与えていることでも知られる。著書『リベラリズムはなぜ失敗したのか』(邦題)が注目されたが、彼の主張や影響力はまだ十分に日本国内に伝わっていない。デニーンの思想を深く理解することで、今の米国政治の動きがより鮮明に見えてくるはずだ。
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