「社会をよくする投資」を知らなすぎた日本の代償 僕らが「マネーゲームのプロ」辞めて本を書く訳
鎌田:はい、はい。
田内:そうこうしているうちに、リーマンショックが起きました。
原因となったアメリカのサブプライムローン問題は、返済能力がない人にお金を貸して、さらにレバレッジを利かせて、金融商品をつくったんですよね。本来、そんな商品を出すべきではないんです。
また、ある学生に面と向かって「サブプライムローンで自殺する人もいる中、どういうつもりで仕事をしているのか」と詰められたこともありました。僕に言われても困ると思いつつ、その一端を担っているんだよな……と。
それにリーマンショックを機に、うちの会社でも大規模な人員整理がありました。
それまで僕は、会社は社員を守ってくれるものだと何となく思っていました。しかし、逆なんですよね。社員が会社を支えている。
会社が存続できるのは、社員が社会に対して「役立つこと」を提供してお金をもらっているからだという当たり前の事実に気づいたんです。
こうしたことが重なり、会社に言われたことをやっていればいいんじゃなくて、1人ひとりが社会に対してどう貢献できるかを考えなければ、会社も自分も生き残れないんだという考えに変わっていきました。
──鎌田さんのお話にもありましたが、金融業界のお給料が高いのはなぜだと思いますか?
鎌田:お客様から預かったお金を、投資や融資などで運用する自由度が高いことが、理由の1つではないでしょうか。収益機会がいろんなところにあるというか。
しかも、実際にものづくりをするわけではないので、設備投資がいりません。そのあたりが、製造業などと構造が違うんです。日本の場合は、製造業の賃金が低すぎるという側面もありますが。
田内:お金を扱う事業だから、悪いことをする社員が出たら困るというのも、大きいと思います。
金融の仕事そのものが、高い給料をもらうべき価値があるかどうかは別問題なんです。本当は、給料以外でうまい仕組みがあるといいんですけど。
投資が「社会に果たすべき役割」とは何か
──では鎌田さんにずばりお聞きしますが、社会にとって投資の目的は何でしょうか?
鎌田:よい会社を増やすことだと思います。お金の流れが経済を形づくり、それが社会をつくるので、やはり経済をつくる主役は会社なんです。
企業がどんな振る舞いをするかで、世の中のあり方は変わります。「自分の会社さえ儲かればいい」というのではなく、社会全体がよくなるように活動する会社を少しでも増やすことが、投資の目的ではないでしょうか。