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「マールアラーゴ合意」への警戒を解くのはまだ早い。トランプ関税の軌道修正に市場は安堵も、アメリカは為替を交渉の武器とすることを諦めず

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4月21日、1ドル=140円台に急伸した円相場を示すモニター(写真:時事通信)

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トランプ関税に対する市場の激しい拒否反応を踏まえて、トランプ大統領は政策の軌道修正を図っている。日本や韓国とは早くディールをまとめて成果を支持者に誇示したいと考えているようだ。累計145%の関税をかけた中国とさえ「習近平と電話で話した」(中国側は否定)、「税率は半分にしてもいい」などと融和姿勢を示し始めている。

中国もアメリカの半導体など戦略物資は125%の報復関税の対象外とすることを検討中のようだから、お互いにダメージコントロールに動いている局面といえるだろう。

市場はこうした軌道修正の兆しに安堵して、直近の底値から戻りを試している。

ひとまず安定を取り戻した金融市場

一時3万1000円割れまで急落した日経平均は3万6000円台を一時回復した。日本の10年物長期金利も1.05%まで低下したが、直近は1.3%台である。

アメリカも同様で、一時4800台前半まで急落したS&P500も5500台まで戻っており、10年物長期金利も3.9%割れまで低下した後、いったん4.5%台まで上昇した(4月28日現在は4.2%まで低下)。

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もともとトランプ関税はアメリカにとって勝算の小さい政策である。アメリカのGDP(国内総生産)の1割を占めるに過ぎない製造業を復活させようにも、トランプ大統領の移民政策のせいで建設作業員などの人手不足が深刻で賃金も高い。投資コストが高いアメリカの製造業に投資するのは地政学リスクに対応した「お付き合い」程度にとどまると考えるのが自然である。

一方、中国は「中国製造2025」の国家戦略の下で製造業の高付加価値化を進めてきた。アメリカが少なくとも短期的には中国製品への依存を完全に断つことが現実的でない以上、トランプ関税によって痛手を受けるのはアメリカ企業や消費者のほうであり、チキンゲームになればアメリカの分が悪いのは明らかである。

問題はこうした軌道修正が今後も続くのか、各国とのディールが物別れに終わり懲罰的高関税が長期間継続するのか、それとも「関税がだめなら為替調整」と第2ステージに移行するのかである。

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