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東南アジアが直面する複雑な政治・地政学。バランス外交でリスクの最小化を図るが、不安定化の芽も

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ベトナムの最高指導者ラム氏と談笑する習近平氏
4月に訪越し、ベトナムの最高指導者ラム氏(右)と談笑する習近平氏(写真:共同)

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7億人の巨大市場を擁し、世界の製造ハブの役割も担う東南アジア。一方、トランプ関税や民主化後退など地政学リスクも顕在化している。本特集では岐路に立つ地域の実相に迫る。

石破茂首相は4月末、ベトナムを訪問した。チン首相との首脳会談後、「地政学的要衝に位置するベトナムとの関係強化は、地域の安定と繁栄に資するものだ」と語った。

その2週間前、中国の習近平国家主席もベトナムを訪問していた。習氏の訪越は1年半足らずで2度目となる。ベトナムの最高指導者で共産党トップのトー・ラム書記長と会談し、「中国とベトナムの運命共同体の建設の新たな青写真を描いていくことを期待する」と述べた。

石破氏と習氏が今年訪れたASEANの国はほかにもある。石破氏は1月にマレーシアとインドネシアを訪問、4月の訪越後はフィリピンにも向かっている。習氏はマレーシアとカンボジアを歴訪している。日中の首脳は東南アジアの重要性を理解して動き、東南アジア各国もそれを自覚している。

石破氏が訪問したフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアは、いずれも南シナ海などにおいて中国の海洋進出で圧力を受けている国々だ。トランプ政権が米国第一主義を掲げる中、対中抑止で米国の助力を得られるか懸念が広がる。同様の状況にある日本とは利害が一致し、安全保障面で結び付きを強める。

一方、中国は米国との貿易戦争が熾烈になる中、東南アジアとの経済的協力が必要不可欠である。米国に対抗するため、重要な輸出入相手国である東南アジア各国と関係強化を狙っている。自らの存在価値を理解し、さまざまな国と協力関係を深める多方向戦略はASEAN諸国の伝統ともいえる。

米中との間で岐路に立つ

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