
電子製品を扱うマレーシアの工場のクリーンルーム(写真:Jes Aznar/The New York Times)
7億人の巨大市場を擁し、世界の製造ハブの役割も担う東南アジア。一方、トランプ関税や民主化後退など地政学リスクも顕在化している。本特集では岐路に立つ地域の実相に迫る。
人件費の上昇で輸出競争力が失われて経済成長が鈍化する──。そんな「中所得国のわな」に陥る国としてマレーシアはよく名前が挙がっていた。だが今、このわなを脱する変化が起きている。
最先端半導体の世界最大の製造拠点である台湾。米アップルや米エヌビディアなど、名だたる企業が台湾のTSMCに半導体の製造を委託する。ただ、台湾の貿易統計によれば、輸出される集積回路(IC)のうち米国向けはわずか4.5%だ(金額ベース)。
米国側の統計を見るとIC輸入全体のうちマレーシアが23.8%を占める。米国にとってマレーシアは最大の供給元の1つになっている。
理由の1つは、半導体のサプライチェーンにある。
半導体製造は大きく前工程と後工程に分かれる。台湾では高い技術力を必要とするシリコンウェハーに回路を形成する前工程が盛んに行われている。そこで造られたウェハーは、裁断してチップ化された後、パッケージングと検査という後工程を経てようやく電子機器に搭載できる製品となる。
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