30年以上、世界の半導体の現場に身を置いて今も現役で活動する半導体エンジニアが日本や世界の半導体政策や業界動向を解説する。
コロナ禍で顕在化した半導体不足は自動車だけではなく家電やさまざまな製品の供給に影響を与えた。しかし、報道などでもその原因がわかりやすく解説されていないと感じた。筆者も友人や親類から「自動車の納入が遅れているのはお前のせい」、「今年の農作物の収穫量が少ないのは半導体不足のせい」、「今年の夏が暑いのも半導体不足のせい」と理不尽な理由で詰められた。そこでこれらの誤解を解くためにも「半導体争奪戦」になった理由を解説したい。
車載半導体不足の原因は「理解不足」
半導体不足は自動車向けで始まった。その原因は2020年から本格化したコロナ禍だった。一時的な自動車販売台数減少により一部の自動車メーカーやそのサプライヤーがこの状態が長引くと判断し、車載半導体の製造枠をキャンセルしたのだ。
半導体メーカーは製造枠をキャンセルされ、そのままにしては多くの製造設備が遊休状態となる。当然、他の製品向けの半導体製造にシフトした。ここで問題となるのは半導体製造には時間がかかりタイムラグが生じることだ。また半導体のファウンドリー(受託製造企業)は基本的に年間契約を行っており製造枠の追加にはコストと時間が必要である。
図1は車載半導体不足のイメージ図だ。まず半導体製造枠をキャンセルされても、すでに製造途中にあった半導体(仕掛品)が完成していくことで一時的に在庫は増える。その後キャンセル分だけ半導体の製造量が減少して在庫も減少していくのだ。
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