日本はなぜ「半導体が届かない国」になったのか 自動車産業ですら世界では優先度が低下の一途

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「買い負け」という国難を、どうしたら乗り切ることができるのだろうか(写真:to.ot/PIXTA)
「日本はNATOと呼ばれています。もちろん、NATO(北大西洋条約機構)ではありませんよ。Not Action Talk Onlyです。話すだけで何も動いてくれない」
ジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれたのは遥か昔のこと。社内調整が多く、数%の値下げに数カ月かかる日本企業は、諸外国にとって極端に面倒くさい「客にするメリットのない存在」になっている。その結果、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材……など、さまざまなものを「売ってもらえない国」になってしまった。
われわれは、「買い負け」という国難をどう乗り切るべきか――。本稿では調達のスペシャリスト・坂口孝則氏の新著買い負ける日本より、買い負けの背景について綴ったパートを一部抜粋してお届けする。

買い負けの現代的背景(1)政府の動き

日本が買い負ける背景として、日本半導体産業の世界的地位低下をあげた。その他、現代的背景を政治の面から示す。アメリカはなんでもやった。

ホワイトハウスでは2021年4月、ジョー・バイデン大統領が「CEO Summit on Semiconductor and Supply Chain Resilience(半導体のCEOサミット)」と名付けた決起集会を開いている。これはホワイトハウスと半導体・IT関連企業のトップを集めて開いたものだ。

ホワイトハウスのホームページでも内容を確認できるが、YouTubeで当日のバイデン大統領の様子を見ると、わざわざ半導体のウェハーを左手で取り関係者に「これがわれわれのインフラストラクチャーであり、多額の投資を行う」と宣言している。

石油や鉱物が眠っている場所は神様が決めたかもしれない。ただし、どこで半導体を生産するべきかは人間が政治的に決めるのだ。

さらに2021年9月23日にアメリカの商務長官であるジーナ・レモンド氏は半導体不足がボトルネックであるとし、代表的な半導体メーカーにたいして透明性を図るように伝えた。これは各社に需要量や在庫量などを開示するように求めたのだ。当然ながら契約情報などは機密にあたる。大きな反発は当然だった。しかし、アメリカは世界の中心であり、強引な手法であっても世界の半導体メーカーの注意をアメリカに向けさせ、もし歯向かったら何が起きるかわからない、と思わせるにはじゅうぶんだった。

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