アロケーション(配分比率)については、結局のところ、販売する企業が、誰に販売するかを決める。複数の関係者は「アロケーションに関わる責任者にとって日本企業は魅力的に映っていない」とする。
2つ目は、使用している半導体の回路幅だ。
半導体は微細化技術が肝だ。小さな面積のなかに多くのトランジスタを配置する。微細化ができるほど高性能になり商品の差別化につながっていく。
半導体を中心とする“天動説”の世界
現在、世界先端の微細化技術を有するのはTSMC、次に韓国サムスンだ。アメリカのインテルが次順位につける。微細化の先端度合いを回路幅のナノで表現する。直観的にはナノ数が小さいほど半導体回路の同一面積に多くの回路を詰め込める。現在、自動車産業で使われる半導体は40ナノていどだ。しかし、スマートフォンでは7ナノといった高性能品が使われる。スマートフォンは1台に100億以上の微細なトランジスタを組み込んでいる。
またTSMCは2ナノの開発や、1ナノの研究を進めるなど、業界内では独走している。新型コロナウイルスは100ナノメートルだから半導体の微細技術の凄さがわかる。
ここでTSMCの2022年第4四半期産業別売上高を見てみよう。
・スマートフォン:38%
・IoT:8%
・自動車:6%
・デジタル消費電気機器:2%
・その他:4%
こう見ると、自動車向けはたったの6%にすぎない。しかもこれは自動車産業を主とする各国高官からのプレッシャーによって上昇した結果だ。少し前には4%しかなかった。しかしそれでも6%だ。つまり、自動車など、TSMCにしてみればささやかな比率にすぎない。
車載用の半導体は利益が稼げないわりには品質要求が高い。周りを見渡せばスマートフォンやコンピュータなど、もっと半導体を高く購入してくれる業界がある。“天動説”の自動車産業から見える光景とは違い、ファウンドリーからすれば、単価が安く質には口うるさい顧客と映る。
さらに売上比率も高くはない。これまで自動車産業は景気が悪くなればただちに内示数量を減らし、景気が浮揚すれば「早くもってこい」と催促する需要家だったが、現在では半導体を中心とする“天動説”の世界が広がっているのだ。
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