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日鉄とUSスチールに迫りくる「3つのシナリオ」 国内縮小に苦しむ日鉄にアメリカ市場は不可欠

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トランプ大統領が「日鉄は買収ではなく、多額の投資をすることで同意した」と述べた2月7日の記者会見 (写真:Cheriss May/The New York Times)

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アメリカ・バイデン前大統領によって禁止命令が出された日本製鉄によるUSスチール買収計画は、一転、トランプ大統領と石破首相による日米首脳会談をへて、「買収ではなく多額の投資」という方向性へ向かい始めた。
日鉄とUSスチールはすでに、買収の可否を判断する審査の過程で不当な政治介入があったとして対米外国投資委員会(CFIUS)やバイデン大統領(当時)らを提訴しているが、「投資」で決着となれば、訴訟は取り下げられる可能性がある。
日米両政府まで乗り出した巨額買収はどのような結末を迎えるのだろうか。
デジタル特集「日鉄の試練 米国の不条理に翻弄」の1回目は、USスチール買収を決めた日鉄側の事情を振り返りつつ、今後のシナリオを展望する。
【「日鉄の試練」今後の公開予定】
2月19日(水) 
全米鉄鋼労働組合(USW)の正体
2月20日(木) USスチールが「身売り」を決断するほど凋落した鉄鋼業界の苦境
2月21日(金) アメリカの反日感情と対峙した外交官・田中均氏に聞く
2月22日(土) USスチールへの「投資」と日本製鉄の事業戦略

「日鉄は買収ではなく、多額の投資をすることで同意した」

2月7日にワシントンで開催された日米首脳会談。会談後の共同記者会見でトランプ大統領はこう述べた。

USスチールの買収は日鉄にとって社運をかけた一大計画だったが、1月3日、バイデン大統領(当時)は、安全保障上の懸念を理由に買収禁止を命じた。日鉄とUSスチールはこれを受け入れず、「(買収を)諦める理由も必要もない」(日鉄の橋本英二会長)と猛反発。訴訟を提起し、大統領令の取り消しと買収にかかる審査のやり直しを求めている。

ところが、1月20日にトランプ新政権が発足すると微妙な変化が生まれ、目下、買収ではない落としどころを探る方向に向かっている。

トランプ氏もバイデン氏と同様、日鉄によるUSスチールの買収は認めない方針を堅持している。しかし会見では「日鉄は買収ではなく投資をする。私は買収は望んでいなかったが、投資なら大好きだ」と歓迎の姿勢を見せた。また、近いうちに日鉄幹部と面会し、仲介と仲裁に乗り出す意向も示した。

日本では、2月10日に林芳正官房長官が「日鉄がこれまでとはまったく異なる大胆な提案を検討していると承知している」と発言した。

来週以降に実現すると見られるトランプ氏と日鉄幹部との面会の場で、アメリカ政府と日鉄は、買収ではない形での着地点に到達しそうだ。一連の経緯について日鉄は「コメントしない」としている。

国内需要は縮小、海外生産に舵切る

日鉄にとって、アメリカ市場への本格進出は事業戦略上欠かせないピースだ。

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