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USスチール「買収阻止」に追い込んだ労組の正体 大統領までをも従わせた強大な政治力

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日本製鉄による買収への賛同を訴えるUSスチール従業員(写真:USスチールのメディアサイトの動画から東洋経済がキャプチャー)

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アメリカ・バイデン前大統領によって禁止命令が出された日本製鉄によるUSスチール買収計画は、一転、トランプ大統領と石破首相による日米首脳会談を経て、「買収ではなく多額の投資」という方向性へ向かい始めた。まもなくトランプ氏と日鉄幹部による会談が行われ、買収計画の落としどころについて議論されるとみられる。
日鉄が直面したアメリカの不条理を考えるうえで重要なのが、買収反対のロビイングをしかけてきた全米鉄鋼労働組合(USW)という組織だ。日鉄とUSスチールは、買収を違法に妨害したとしてアメリカ国内で2番手の鉄鋼メーカー、クリーブランド・クリフスとローレンソ・ゴンカルベスCEOと、USWのデビッド・マッコール会長に訴訟を起こしている。
日鉄がUSWをやり玉にあげる理由は何か。そもそも、なぜUSWは大統領の判断に影響を与えるほどの力を持っているのか。その主張に正当性はあるのか――。
デジタル特集「日鉄の試練」2回目は、USスチール買収阻止に向けて政治力を発揮した労働組合の正体に迫る。

【「日鉄の試練」ラインナップ】
2月14日(金)日鉄とUSスチールに迫りくる「3つのシナリオ」
2月20日(木)USスチール競争力向上に寄与しなかった保護政策
2月21日(金) アメリカの反日感情と対峙した外交官・田中均氏に聞く
Coming Soon! USスチールへの「投資」と日本製鉄の事業戦略

「アメリカ市場における自社の優位性確保を目的として、日本製鉄のアメリカ参入をなんとしても阻止したいクリーブランド・クリフスの経営者およびゴンカルベスCEOは、USW(全米鉄鋼労働組合)の会長と連携し、組合の有する強大な政治力を利用してバイデン大統領に働きかけた。こともあろうに、政治的な理由からバイデン大統領がこれに応じた。到底受け入れることはできない」

アメリカ大統領によって禁止命令が出された直後の1月7日、記者会見をした日本製鉄の橋本英二会長は、クリーブランド・クリフスとUSWに怒りの矛先を向けた。

1月7日の記者会見で、クリーブランド・クリフスとUSWに訴訟を起こすことを表明した日鉄の橋本英二会長(写真:梅谷秀司)

日鉄とUSスチールは目下、2つの訴訟を提起している。

1つは、買収を巡る審査のプロセスが不適切であったとしてバイデン前大統領ら米政府を訴えるもの。再選を目指していたバイデン前大統領が、USW執行部の支持を取り付ける目的で買収阻止を図った結果、審査のプロセスが歪められたと主張する。安全保障とは関係のない政治的な思惑から、買収阻止という結論ありきで不誠実な審査がなされたという趣旨だ。

日鉄「3者が共謀して中傷活動」

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