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日本製鉄を海外展開に走らせる「危機感」の正体 技術力を生かせる成長市場を選んで進出

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日本製鉄 社長COOの今井 正氏
今井 正(いまい・ただし)/日本製鉄 社長COO(最高執行責任者)。1963年生まれ。1988年に新日本製鉄(現・日本製鉄)入社。1997年マサチューセッツ工科大学大学院材料工学専攻博士(工学)取得。名古屋製鉄所長、常務取締役を経て2023年副社長に。2024年4月から現職(撮影:尾形文繁)

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分断・多極化する世界で、新しい視界を開くことができるか。日本が向かうべき道とは──。本特集では、株式・マネーから日本の政治経済、世界情勢、産業・企業動向、そしてスポーツ・エンタメまで。2025年の注目テーマを徹底解説する。

2023年12月にアメリカの老舗鉄鋼メーカー、USスチールの買収を発表した日本製鉄。インド、タイでも現地企業を買収し、海外生産拠点の強化に奔走する。今井正社長に狙いを聞いた(インタビューは11月末実施)。

日本こそ問題提起すべし

──中国から輸出される安価な鋼材が市場を攪乱しています。

国内外ともに、事業環境はかつてなく厳しい。中国で鋼材需要が減退すると国際市況への影響が大きい。2024年の中国の鋼材輸出量は1億トンを超える見通し。これは日本の内需の2倍の規模だ。

30カ国以上が中国鋼材に対するアンチダンピング関税などの措置を検討しているが、貿易立国を掲げる日本は現状、通商対策をほとんどとっていない。このままでは格好の輸出先になってしまう。足元では急速に流入が増えており、対策を講じる段階にあると業界団体を通じて政府に相談している。

日本国内の需要は厳しい。1990年代に9000万トンだった日本の内需は足元で5000万トン。30年で約4割も減った。われわれは需要に合わせて国内の生産能力を2割削減した。内需との差分は輸出に回し、現在当社の輸出比率は約半分。輸出を増やして何とか国内での生産を続けてきた。

同時に、顧客視点に立った技術的な提案や安定供給が求められるひも付き分野では、需要家との価格交渉で値上げを実現してきた。自動車向けを筆頭に出荷の3分の1ほどについては適正なマージンをいただけるようになり、収益力が高まっている。

一方、輸出はそうした交渉ではなく市況で価格が決まる。東南アジアは主な輸出先だが、流入する安価な中国鋼材に押されて利益を減らしている。

──2025年に環境は改善しますか。

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