有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ビジネス #2025大予測|スペシャルインタビュー

米中で進行する「格差拡大」という病巣の現実 "格差研究の先駆者"が指摘する不安定要因

8分で読める 有料会員限定

INDEX

ブランコ・ミラノビッチ(Branko Milanovic)/米ニューヨーク市立大学大学院センター 客員大学院教授。セルビア社会主義共和国出身。ベオグラード大学で博士号取得後、世界銀行調査部に約20年勤務。著書に『資本主義だけ残った』(みすず書房)など。近く『Visions of Inequality』の邦訳を明石書店から刊行予定。
分断・多極化する世界で、新しい視界を開くことができるか。日本が向かうべき道とは──。本特集では、株式・マネーから日本の政治経済、世界情勢、産業・企業動向、そしてスポーツ・エンタメまで。2025年の注目テーマを徹底解説する。

2024年の大統領選挙でアメリカ国民は再びドナルド・トランプ氏を選んだ。背景に何があるのか。格差研究の先駆者として知られるブランコ・ミラノビッチ氏に聞いた。

トランプ氏の再選が意味するもの

――あなたは所得分配の変化を示す「エレファント・カーブ」という図によって、先進国の中間層が没落している状況を明らかにしました。その観点から、トランプ氏再選の意味合いをどう捉えていますか。

トランプ氏の勝利は、アメリカの有権者のグローバリゼーションに対する不満、そして諸課題に対して無関心なリベラルエリートたちへの不満を示している。

1980年代後半から今日にかけて、世界の所得分布における中間層、とくに中国を含む新興国の人々の所得が急成長を遂げた。さらに、世界のトップ1%の富裕層も高成長を遂げている。

一方、先進国、とりわけアメリカやドイツ、日本の中間層や低所得層は、所得の実質成長率が1%程度にとどまっている。これが私が2012年に示した「エレファント・カーブ」の事実であり、中間層や労働者階級の不満をある程度、説明可能だ。

――グローバリゼーションと中間層の没落の関係性について教えてください。

1990年代後半に始まった中国からの輸入拡大やアメリカ企業の海外生産が、それまで国内で雇用されていた人々にネガティブな影響を与えた。生産活動が中国や他国にアウトソースされた結果、国内の人々がこれまでと同じ賃金で仕事を見つけるのに苦労している。

経済的な観点から見ると、資本家がアメリカ国内で時給40~50ドルで人を雇うよりも、他国で時給4~5ドルで人を雇うほうが合理的だ。また、国内で生産するよりも安価な商品を輸入するほうが合理的だ。

問題は、国内に取り残された人々に対して社会が同等の良い仕事を提供できなかったこと、あるいは再訓練や別の方法で彼らを満足させられなかったことだ。

歴史を振り返れば、自由貿易によって一部の人々が損失を被るのは珍しいことではない。経済学者は損失を被る人々は補償されるべきだと言うが、実際にはそれが実現されていない。とくに、利益を得る人々が自国ではなく他国にいる場合、これは政治的問題に発展する。このことが、グローバリゼーションへの抵抗を強めている。

2/3 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数