国立大学の利益剰余金は総額1.7兆円
「東京大学が2026年度に2年連続で最終赤字になる見通し。研究者の削減が不可避」
8月6日の日本経済新聞の記事に関係者はざわついた。東大は翌7日に「研究者数の削減を検討している事実はない」とプレスリリースを発表した。
さらに文部科学省も「東京大学の財務状況に関する報道についての見解」を同12日に出した。
・単年度の赤字をもって資金がショートしていることを表すものではない
・キャッシュフロー計算書は25億円の黒字で、25年度末の利益剰余金1546億円、寄付金(寄付金を受け取ったがまだ使われていない寄附金債務)861億円を有しており、企業であれば倒産に直結するような赤字ではない。
・損益計算書上の収益と費用の差(赤字)は過年度の利益の累計である利益剰余金や、寄付金の活用などにより措置
など火消しに躍起だった。
この中で何度も登場した「利益剰余金」。企業の場合、過去の利益の蓄積を計上する勘定科目だが、国立大学の利益剰余金とはどのようなものなのか。国立大学法人の貸借対照表は資産の部(借方:左側)は固定資産→流動資産という順番に並ぶ。貸方(右側)は負債の部、純資産の部で内訳として資本金や資本剰余金に並び利益剰余金が記載されている。
この国立大学法人の純資産の部で興味深い点がいくつかある。まず資本金の内訳は「政府出資金」のみ。資本剰余金では、収益を予定していない教育研究用の固定資産などの減価償却費は損益計算書の費用ではなく、直接「資本剰余金」からマイナスする、など企業財務と異なる点も多い。
さらに、今回のテーマである利益剰余金は、すべてすぐに使える形で現預金などであるわけではない。「例えば、利益剰余金の中の『積立金』は国立大学特有の会計処理上の形式的・観念的利益等」(文部科学省資料)など、全額が赤字補填に使えるわけではないことに注意が必要だ。
まず全体像を見ておく。すべての国立大学法人の純資産の合計は最新の25年度(26年3月期)実績で、総資産11兆4082億円、負債2兆9479億円、純資産8兆4602億円(うち利益剰余金1兆7175億円)となっている。自己資本比率(純資産÷総資産)は74.2%、利益剰余金比率(利益剰余金÷総資産)は15.1%となっている。
同じく24年度(25年3月期)実績は総資産11兆3034億円、負債2兆8271億円、純資産8兆4763億円(うち利益剰余金1兆7187億円)となっている。自己資本比率75.0%、利益剰余金比率15.2%とほぼ同じ水準だ。
1位東京大学、2位大阪大学
では、この利益剰余金を個別の大学ごとにみると、どうなるのか? 24年度のデータでランキングした。
1位は東京大学で1610億円。資産合計1兆5048億円で利益剰余金比率は10.7%。当期純利益も81億円と黒字になっている。ただ、先日発表された翌年の26年3月期は当期純損失63億円。積立金の取り崩しなどは前期25年3月期の利益剰余金1610億円から減らし、1546億円となっている。
それでもまだ多く残っているように見えるが、前述のとおりすべて赤字補填に使えるわけではなく、必ずしも大きな余裕ではない。さらに27年3月期の予算でも赤字見込みだ。不祥事発生で一部補助金が不交付になったり、国際卓越研究大学認定も危ぶまれるなど、安泰というわけではなさそうだ。
2位は大阪大学で1279億円。資産合計(6074億円)に対する比率は21.1%。当期純利益も127億円で東大よりもよい数字だ。ただ、阪大も26年3月期は赤字となっている。
この記事は有料会員限定です
残り 182文字


