作家で大学講師の額賀澪氏
前回は、日本航空(JAL)でキャリアを始め、その後6つの大学を渡り歩いてきた桜美林大学ビジネスマネジメント学群の戸崎肇教授を取り上げた。戸崎氏のキャリアから見えてきたのは、「断らない」「専門を広げる」「複数の世界を持つ」という3つの法則だった。
今回は、作家であり、大正大学表現学部客員准教授、日本大学芸術学部非常勤講師である額賀澪氏だ。
額賀氏の話を聞いていて印象的だったのは、大学という「場」と、そこで学ぶ学生たちの状況をかなり細かく見ていることだ。考えてみれば、これは作家としての仕事とも重なる。額賀氏の小説は、その物語を象徴する場所や場面も丁寧に描かれている作品が多い。人がいまどんな状況に置かれ、何を感じ、どう動こうとしているのかを捉える。そうした作家として培ってきた観察力や状況判断そのものが、大学で学生と向き合う際にも生かされているのかもしれない。
そもそも作家が大学の教壇に立つこと自体は、目新しい話ではない。夏目漱石(東京大学や早稲田大学など)、坪内逍遙(早稲田大学など)、上田敏(東京大学や京都大学など)をはじめ、名だたる文豪たちも実は大学で教えてきた。
額賀氏は、日本大学芸術学部文芸学科を卒業。2015年に『屋上のウインドノーツ』で第22回松本清張賞、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞し、作家デビューした。現在は日本文藝家協会会員でもある。毒舌なキャリアアドバイザーを描いた『転職の魔王様』は成田凌主演でドラマ化され、長編小説『沖晴くんの涙を殺して』は広瀬アリス主演で映画化、今年10月から全国公開される。まさに今、勢いに乗る作家だ。
額賀氏に聞きたいのは「どうやって大学教員になったか」ではない。本業だけでも十分やっていける立場にありながら、なぜそこまでして大学に立ち続けるのか、である。
「本業が作家で、副業で大学講師してるつもりなので」専任を目指す考えもないという。
実は、額賀氏のように専任を目指さない生き方は、決して特殊なケースではない。筆者が全国55大学122人の実務家教員を対象に独自調査したところ、「最終的に専任講師を目指すか」という問いに、55%が「いいえ」と回答した。
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