「給料の額=人の価値」という考えが招いた大問題 「トランプ無双」を後押しするエリートへの憎悪

インタビューに応じるハーバード大学のマイケル・サンデル教授
アメリカでは、リベラルと保守層の激しい分断が取り沙汰されて久しいが、なぜリベラル側はいつまで経っても「トランプ現象」を理解しようとしないのか。今の「リベラル」「エリート」の根本的な問題点をフランスの経済学者、パリ経済学校のトマ・ピケティ教授との対談本『平等について、いま話したいこと』を上梓したハーバード大学の哲学者、マイケル・サンデル教授に聞いた。
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撮影:AMP 編集:田中険人
トランプの成功を後押しした「不満」
――4年ほど前の取材では、アメリカではエリート層に対する不満が高まっているという話がありました。その後アメリカの状況が悪化し、エリートに対する怒りがさらに高まったことが、トランプ政権の誕生につながったのでしょうか。
バイデン氏が2020年にトランプ氏を破ることができたのは、バイデン氏が仕事の尊厳について語ったからでもある。彼は人々のエリート――職業エリート、資格エリート、高学歴エリート――に対する怒りに応えようとした。
しかし、トランプ氏は今回の選挙でも、大学教育を受けていない有権者の圧倒的な支持を獲得し、従来民主党に投票していた多くの労働者階級の有権者の支持を獲得したわけだ。
トランプが成功したのは、多くの労働者が職業エリートやエスタブリッシュメント、メディアなどに対して感じている怒りや憤りを代弁し続けたからだろう。こうした傾向はアメリカの政治において、また、世界中の多くの民主主義国家の政治において、強力な力となっている。
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