「給料の額=人の価値」という考えが招いた大問題 「トランプ無双」を後押しするエリートへの憎悪

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これがパラドックスなのだ。具体的な政策という観点で言えば、トランプ氏は彼を支持する労働者を助けるためにほとんど何もしていないということだ。にもかかわらず、有権者はトランプを支持している。

これは経済や賃金の問題だけでは語れない。「エリートから見下されている、尊敬されていない、労働の尊厳が尊重されていない」という感覚を多くの労働者が抱いているということなのだ。

不平等には3つの「側面」がある

――パリ経済学校のピケティ教授との対談の中では、3種類の不平等――賃金、政治参加、そして尊厳と尊敬に関するもの――について言及しています。尊厳における不平等が是正されない限り、ほかの2つも改善されないとお考えですか?

不平等の3つの側面はすべて一緒に取り組まなければならない。ピケティ教授と私は新著の中で経済的不平等、すなわち所得と富、政治における発信力や参加という政治的不平等、尊厳と尊敬の平等という3つについて議論をしている。

政治参加や発言力の不平等にも対処しない限り、経済的不平等に対処することはできないし、尊厳や名誉、尊敬、社会的評価の不平等にも取り組まない限り、経済的不平等を是正する政策を実現することは難しいだろう。

そして、経済的不平等を減らすだけでなく、見下されている、尊重されていないという人々の感覚にも対処できなければ、経済的不平等に立ち向かい、減らすための真剣な対策を可能にするような、共同体意識や連帯感、相互尊重や義務感を生み出すことはできない。

こうした議論ではときどき、経済的な不平等と文化的な不平等、政治における意見の相違は別のものだという議論になり、どちらがトランプの当選を後押ししたのか、という話になる。経済的不平等と、勝者と敗者の間の溝、あるいは文化的な問題のどれが原因なのか、と。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事