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ソフトバンクのトップが明かした「AI戦略」の全貌 1兆パラメーターの国産LLM構築に懸ける理由

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宮川潤一(みやかわ・じゅんいち)/1965年生まれ。インターネット接続事業で起業後、孫正義氏の誘いで現・ソフトバンクに入社。主にテクノロジー領域の事業統括を務める。ソフトバンク副社長兼CTO(最高技術責任者)を経て、2021年4月から現職(撮影:尾形文繁)

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12月23日発売の『週刊東洋経済』年末合併号では「2025年 大予測」と題して、大きく揺れ動く世界の政治・経済情勢から、国内外の主要業界の動向、注目企業の先行きなど、幅広いテーマで2025年の展望を解説している。「東洋経済オンライン」では、その中から注目しておきたいキーパーソンへのインタビューの拡大版を発売に先駆けて配信していく。

「AI革命」をグループ全体で掲げ、アメリカの巨大IT企業にも匹敵する1兆パラメーター超の国産LLM(大規模言語モデル)の開発を目指すソフトバンク。すでにAI計算基盤の整備に1700億円規模の投資(2023~2025年度)を決めており、11月までに、エヌビディアから調達したGPU(画像処理半導体)6000基を使った大規模計算基盤を構築し、4600億パラメーターのLLMを公開した。

さらなる計算基盤拡大に向け、北海道や大阪では、AIの機能を高める「学習」向けなどの利用を想定した大規模AIデータセンターの構築も進める。

AIと本業の「通信」の融合も本格化させている。エヌビディアの技術を活用し、AIとRAN(無線アクセスネットワーク)が同じコンピュータ基盤上で統合する「AI-RAN」を実現する新システム「AITRAS(アイトラス)」の開発に本格着手。AIで携帯電話基地局の運営効率化を図るとともに、自動運転をはじめとする将来のAIサービス向けの計算基盤としての利活用を想定する。

ソフトバンクはAIを介し、「通信会社」からどう変貌しようとしているのか。宮川潤一社長を直撃した。

オープンAIの「o1」は衝撃だった

――さまざまなAI関連事業を足元で進めています。その進捗とAIを取り巻く現在の環境をどのように見ていますか。

(2021年の)社長就任時に「10カ年計画」を立てたが、実はその計画はすべてがAIに関するものだった。もともと孫(正義・ソフトバンクグループ会長兼社長)さんから、「AI時代が来るから、ヒト・モノ・カネすべての経営資源を振り向けるべき」という話があった。

(通信)ネットワーク改造も含めて、AI基盤を整備するのは10年がかりの仕事になる。4年目の今年は順調で、やるべき下積みは全部やった。来年、再来年にやることも決まっていて、計画通り進んでいる。

AIの進化は年々早くなり、とくに今年は自分の想像していたスピードを超えている。僕の衝撃は、(オープンAIが9月に公開した最新AIモデル)「o1(オーワン)」だ。今までは、事前学習した内容の総論をまとめて教えてくれるようなものだったが、o1は「自分」で考え出している。進化が桁違いに早く、回答を見ても間違いなく僕よりも賢い。来年の真ん中くらいには、どの分野でも人間よりも賢い「AGI(汎用人工知能)」の世界に到達すると想像している。

今後、AGIを人間の生活に役に立たせる使い方を提案できるかが重要になる。われわれの戦略も前倒しをしないと人間が置いていかれるので、AGIを道具として使いこなす基盤づくりをもう少し加速しよう、というのが今の感覚だ。

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