米中GPU競争に遅れる日本、半導体サプライチェーン川上支配とオープンウェイトモデルが逆転のカギ

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GPU競争
最先端AI技術へのアクセスが企業群に大きく依存する構造が生まれつつあり、国家間の経済競争力や安全保障にも影響を及ぼしかねない新たな地政学的力学を生む可能性がある(写真:phonlamaiphoto/PIXTA)
I. 世界的なAI競争:計算能力という新たな経済エンジン

人工知能(AI)開発競争が世界的に激化する中、その中核を成すのが圧倒的な計算能力、特にGPU(画像処理半導体)の確保である。この分野では、アメリカの巨大テック企業による桁外れの投資が続いている。

「GPU競争」を巡る各企業の投資

イーロン・マスク氏率いるxAIは、AIスーパーコンピュータ「Colossus」をNVIDIA製GPU20万基体制へと拡張中だ。当初のH100 GPU10万基に加え、H100を5万基、さらに最新のH200を5万基追加し、理論上の演算性能は約497.9エクサフロップスに達する見込みである。この施設が発表からわずか122日で構築された事実は、開発競争の熾烈さを示している。

Meta(旧Facebook)も同様に、2024年末までにNVIDIA H100 GPUを35万基導入し、H100約60万基相当の計算能力を目指す計画を発表。すでに2万4576基のGPUから成るクラスターを2基稼働させている。さらにOracleは、OpenAIのデータセンター向けに、NVIDIAの最新鋭チップGB200を約40万個、400億ドル規模で投資する計画だ。

OpenAI自体も、次世代AIモデル開発プロジェクト「Stargate」に今後4年間で総額5000億ドルの投資を見込み、2026年末までに6万4000基のBlackwell GPUを稼働させるなど、膨大な計算資源を確保しようとしている。これらの動きは、Grok 3やGPT-5といった最先端AIモデルの開発競争が背景にある。

この計算能力を巡る「GPU競争」は、いくつかの重要な構造的変化を示唆している。第一に、AI開発の最前線が、一部のアメリカの巨大テック企業と、その心臓部であるGPUを供給するNVIDIAのような特定企業に極度に集中している点だ。

これにより、最先端AI技術へのアクセスがこれらの企業群に大きく依存する構造が生まれつつあり、国家間の経済競争力や安全保障にも影響を及ぼしかねない新たな地政学的力学を生む可能性がある。

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