エヌビディア製GPUを約2000基導入し、動き出した最先端のAIデータセンター。その運営を可能にしたのは、「余白の経営」だった。
ゴォーッ、ゴォーッ、ゴォーッ――。
北海道・札幌の北側に隣接し、日本海沿いに位置する石狩市の郊外。東京ドームよりも広い敷地内のある棟に移動し、長々と続く中央通路に案内されると、廊下沿いの扉から重低音が漏れ聞こえる。
「耳栓 イヤーマフ着用」。そんな紙が貼られた部屋の入り口から室内に足を踏み入れると、数百はあるだろうか、大量のラックが整然と立ち並ぶ姿が目に入った。と同時に、部屋中に轟く滝のような音が耳を覆う。
ラックに近寄り、身を屈めて棚に収容されたサーバーを覗き込むと、熱気を含んだ強い風が一気に顔に吹きつけた。爆音の正体は、高熱を発するサーバーを冷やすために急回転するファン(送風機)だった。
導入したGPU2000基は即完売
ここは、クラウドサービスを手がけるさくらインターネット(大阪市)が運営している「石狩データセンター」。この一室では、さくらが調達したエヌビディア製のGPU(画像処理半導体)サーバーのみを収容し、主に生成AIの「学習」に利用されている。
膨大な演算処理が必要なAI開発における計算基盤として最重視されるのがGPUで、世界でAI開発競争が進む中、AI向け半導体分野でエヌビディアの1強が続く。GPU需要は逼迫し、安定的に調達できる国内企業はさくらやソフトバンクなど一部に限られる。
さくらは2023年以降、経済産業省の支援を受けながら、エヌビディア製GPU「H100」を今年6月までに計約2000基導入し、稼働させたばかりだ。生成AI向けGPUクラウドとしてサービス提供を始めたが、研究機関を中心に引き合い旺盛で、販売開始と同時に「2000基すべてが売れた」(田中邦裕社長)という。
生成AI向けクラウドの展開を受け、2025年3月期の売上高は290億円(前期比32.9%増)、営業利益は26億円(同2.9倍)と急成長を見込む。今後2027年末までに、最新型のGPU「B200」を中心に新たに8000基の調達も予定する。
まさに、現在進行形で活況を呈している石狩データセンター。そこで10月末に開かれた見学会に参加した記者は、国内における“AIデータセンター”の最前線を目の当たりにした。次ページから、撮影厳禁とされている内部の詳細をお届けする。
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