クルマの電動化とスマート化の加速が、100年を超える歴史を持つ自動車の設計に劇的な変化をもたらしている。その最先端を走るのは、新車販売台数に占めるEV(電気自動車)とPHV(プラグインハイブリッド車)の比率がすでに5割に達した中国だ。
中国の自動車産業の発展は、エンジン車が主流の時代には欧米や日本に大きく出遅れ、中国の自動車デザイナーやエンジニアが世界の潮流をリードすることなど夢物語だった。
だが、2020年代に入って火がついた急速なEVシフトが、中国の自動車産業に新たな世界への扉を開いた。
「新興メーカーの相次ぐ参入とスマートカーの人気の高まりは、中国の自動車設計者たちを大いに奮い立たせた」。新興EVメーカーの理想汽車のデザイン部門を率いる那嘉・副総裁(副社長に相当)は、財新記者の取材に対してそう述べた。
“見た目”の変化が買い替え後押し
今日の中国市場で販売されるスマートカーには、車体前部のグリルを廃した「グリルレス」デザイン、電動格納式ドアハンドル、複数枚の大画面ディスプレーなどが当たり前のように採用されている。こうした目に見える変化は、中国の消費者が旧来のエンジン車との違いを直感的に認識する手がかりになり、スマートカーへの買い替えを促す力となった。
これらの変化はなぜ生じたのか。1台の自動車の設計は、デザイナーの着想や製品企画部門のコンセプトだけでは決まらない。採用する新技術やエンジニアリング上の必要性、コストの制約、さらに交通法規や安全基準、環境基準などの要素が複雑にからみ合うなかで、さまざまな部門が緊密な連携を重ねて形づくっていくものだ。
エンジン車の時代にも、自動車の設計は絶え間なく変化してきた。
「例えば歩行者保護の安全基準が導入されると、クルマのボンネットは(対人事故の衝撃を和らげるために)膨らみを帯びたデザインに変わり、素材も弾力性のあるものに置き換えられた」。民営自動車大手の吉利汽車(ジーリー)のデザイン部門を統括する陳政・副総裁はそう振り返る。



















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