だが、電動化とスマート化がもたらした変化の大きさとスピードは、エンジン車の時代とは比較にならない。「自動車設計の常識が足元からすっかり覆ったように感じる」。国有自動車大手の上海汽車集団のチーフデザイナーで、この道26年の経験を持つ邵景峰氏は、そう戸惑いを隠さない。
エンジン車のほとんどは車体前部にエンジンを搭載し、外気の取り入れや放熱のためのフロントグリルを持つ。ドイツのBMWの「キドニーグリル」やメルセデス・ベンツの「スリーポインテッドスター」に代表されるように、グリルの形状やその上に取り付けられたエンブレムは、ブランドの個性や認知度を高める伝統的手段にもなってきた。
しかし、モーターで走行するEVはフロントグリルを必要としない。EVの大衆化で世界に先行したアメリカのテスラは、エンジン車との差別化を意図したグリルレスのスタイリングを広く採用。その成功に触発された中国メーカーがこぞって後追いし、「EVと言えばグリルレス」というイメージがにわかに形成された。



















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