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〈脱請負がキーワード〉インフロニアHDの岐部社長が明かす「三井住友建設の買収」の真意

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インフロニアと三井住友建設
「インフラの上流から下流まであらゆるところにサービスできる会社になりたい」と述べるインフロニア・ホールディングスの岐部一誠社長兼CEO(撮影:今井康一)

来年1月に「MUFGスタジアム」へと呼称が変わる国立競技場。独立行政法人が担ってきた同競技場の運営は、今年4月から民間企業の「ジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメント」(JNSE)に移行している。5年の契約期間で総額100億円と推定される命名権を募集したのも同社だ。

JNSEにはNTTドコモや公益社団法人・日本プロサッカーリーグなどの4者が出資している。インフロニア・ホールディングス(HD)傘下の前田建設工業も出資企業として名を連ねる。

インフロニアHDは2021年10月、前田建設工業、前田道路、前田製作所が共同持株会社を設立して誕生した。発注者からの「請負」で建設するだけにとどまらず、運営などに携わって収益機会を広げる「脱請負」の分野に注力している。JNSEへの出資もその一環で、スタジアム・アリーナ事業で実績を積むことで今後の案件獲得増につなげる狙いだ。

M&A(合併・買収)にも積極的だ。22年に実施した東洋建設へのTOB(株式公開買い付け)は任天堂創業家の資産運用会社の介入で不成立に終わったものの、24年には陸上風力開発やO&M(運転保守)事業などを手がける「日本風力開発」を約2000億円で買収した。

期待するのは「脱請負」でのシナジー

インフロニアHDは準大手ゼネコンの三井住友建設に対するTOBを9月に終え、12月中に完全子会社化する。買収総額は約940億円となる見込みだ。24年度の売上高はインフロニアHDが8475億円、三井住友建設が4629億円。単純合算で1.3兆円という売り上げ規模は、ゼネコン業界でスーパーゼネコン5社に次ぐ。

インフロニアと三井住友建設
今年5月に統合会見を開いたインフロニアHDの岐部社長兼CEO(左)と、三井住友建設の柴田敏雄社長(記者撮影)

だが、インフロニアHDの岐部一誠社長兼CEOは「スーパーゼネコンに次いで何番ということにあまり価値があるとは今のところ思っていない」と意に介さない。

買収の狙いを読み解くためのキーワードが「脱請負」だ。「請負だけしかやらないということだったら、多分買収の判断をしていない」。岐部社長は東洋経済の取材にそう語った。

脱請負を進める背景には、「請負というビジネスは間違いなく氷河期に向かっている」(岐部社長)との危機感がある。人口減で国内の建設市場が縮小することは避けられない一方、官民連携でインフラを維持・整備する市場は伸びるとみる。

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