米中「入港手数料」戦争勃発で国際海運業界に激震。航路変更から本社移転まで、追加コスト回避へあの手この手
米中貿易戦争の新たな展開が、世界の海運業界を翻弄している。争点は両国が10月14日から相互に導入した、船舶に対する入港手数料の課金だ。
アメリカ東部時間10月14日午前5時、積み荷を満載した香港船籍の大型コンテナ船「コスコ・シッピング・ジャスミン号」が、ジョージア州のサバンナ港の岸壁にゆっくりと接岸した。
一方、そこから約1万2000キロメートル離れた中国・浙江省では、北京時間10月14日午前0時にアメリカ船籍のコンテナ船「マヌカイ号」が寧波舟山港の梅山埠頭に到着した。
コスコ・シッピング・ジャスミン号の運航会社は中国の国有海運最大手の中国遠洋海運集団(コスコ・シッピング)、マヌカイ号はアメリカ海運大手のマトソンだ。両船は、アメリカ政府と中国政府からそれぞれ懲罰的な入港手数料を課された最初の船舶群となった。
アメリカの実施強行に中国が対抗
実際に徴収された入港手数料は、1万3500TEU(20フィートコンテナ換算)を搭載していたコスコ・シッピング・ジャスミン号が425万ドル(約6億4000万円)、2600TEUを搭載していたマヌカイ号が446万元(約9400万円)に上る。
今回の紛争の口火を切ったのはアメリカ側だ。アメリカ通商代表部(USTR)は2025年4月17日、中国の海事・物流・造船分野に対する通商法301条に基づいた制裁措置を発表。中国(香港・マカオを含む)の事業体が運航または所有する船舶および中国で建造された船舶(中国関連船)を対象に10月14日から「港湾料」を徴収し、金額を段階的に引き上げると宣言した。
それに対して、中国は同等の対抗措置を打ち出した。中国交通運輸省が10月10日付の通達で、アメリカの組織や個人が運航または所有する船舶およびアメリカ製の船舶(アメリカ関連船)を対象に、同じく10月14日から「特別港務費」を課すと明らかにしたのだ。
財新記者の取材に応じた中国側の関係者は、USTRが今回の措置を発表してからの約半年間、中国当局はアメリカのカウンターパートと接触・協議を重ね、理不尽な入港手数料の撤回を求めてきたと証言した。しかしアメリカ側が実施を強行したため、やむなく対抗措置に踏み切ったという。



















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