有料会員限定

〈サイバー攻撃被害〉アスクル吉岡晃社長の悔恨/「顧客が他社から買うのは当然。逃げずに信頼回復を尽くすことが経営責任」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
物流センターの東京DC(東京・江戸川区)が再稼働した12月17日、アスクルの吉岡晃社長は報道陣を前に陳謝した(撮影:大澤誠)
「お客様の貴重な情報を預かる企業として、責任の重さを再認識しています。これからセキュリティ・ガバナンス(統治)の抜本的な改革を果たし、社会に対する責任・使命を果たしてまいります」――。
12月17日、11時20分。東京・江戸川区にあるアスクルの主力物流センターである東京DCで、吉岡晃社長兼CEOが多くの報道陣を前に頭を下げた。
アスクルは10月19日に発生したランサムウエア(身代金要求型ウイルス)によるシステム障害を受け、法人・個人向け通販の受注・出荷・新規登録などのサービスを全面的に停止。親会社のLINEヤフーからもエンジニアの投入を受け、物流システムの復旧に取りかかりながら、FAXや手入力による運用で出荷トライアルを進めてきた。その間、74万件弱の個人情報流出が判明するなど、顧客にも大きな被害が及んだ。
10月29日からの出荷トライアルでは、医療機関や介護施設など一部の法人顧客を優先。コピー用紙など37アイテムを箱(ケース)で注文を受け、最小限で出荷を再開した。続く11月7日には230アイテムまで拡大し、12月3日には中小事業所向けEC(電子商取引)の「アスクル」、中堅企業向けの「ソロエルアリーナ」ともに、Webサイトで受注し、箱でなく単品(バラ)単位での細かな注文も可能になった。
そして12月17日の本格復旧である。東京DCと関東DC(埼玉・上尾)から、物流システムを活用する形で、約1万6000アイテムまで出荷を拡大できるようになった。これは金額ベースでは従来の6~7割の水準に当たる。ただ、今までの「明日来る」のような翌日配送に完全に戻るには、まだ時間がかかる。
東京DCの稼働日には、吉岡晃社長がシステム障害後に初めて公の場所に現れた。以下、当日の報道陣とのやり取りを再現する。

巻き返し策より、今は安全なサービスを

━━今日の稼働で本格復旧にメドがついたが、(システムが)止まっている間、競合他社の攻勢で売り上げも落ち、信頼も落ちた。これから業績の巻き返しに何が必要か。

業績については、今後決算発表を行う中で説明したい。最重要なのは、今が安全・安心なサービスであるか、お客様にきちんとお伝えすることだ。サービス復旧ということは、元のようにきちんと商品が届き、お約束を守れるサービスにしていくか。これが何よりも重要と考える。

センターで安全稼働をきちんと見定めて、順次再開を果たし、全国的に安全が確認され次第、どのように(巻き返し策を)やればいいか考えていきたい。

――システムを共通化していたことも今回の事態を招いたと言えるが、それによって高度で効率的な出荷ができていた。システムをどうとらえ、今後どう付き合っていくつもりか

おっしゃるとおり、システムによってスピードや効率が「功」とみなすところ。一方、「罪」については、サイバー攻撃に対するわれわれの体制が足りていなかった。(システムのリスクを)経営のトップリスクと位置づけ、体制や資源配分などをやり直さなければということなのかと思う。

アスクル
取材対応中、吉岡社長の表情は硬かった(撮影:大澤誠)
次ページ私自身の経営責任については・・・
関連記事
トピックボードAD