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BCGのアジア・パシフィック会長に日本人が初就任した意義とは?7月に着任した佐々木氏を直撃、「日本市場がグローバルから認められた」

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佐々木靖/ささき・やすし 慶応義塾大学経済学部卒業後、日本興業銀行 (現みずほフィナンシャルグループ) 入行。2002年BCGに入社。銀行、保険会社、証券会社、投資運用会社を中心に中長期戦略、組織変革、営業改革、IT戦略、デジタル戦略構築などのプロジェクトを手がける。 BCG日本支社長兼北東アジア総責任者を経て、2025年7月よりアジア・パシフィック会長。INSEAD経営学修士 (MBA)、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士(MSc)(写真:今井康一)
経営コンサルティングファーム大手のボストン コンサルティング グループ(BCG)は2025年7月、日本支社長兼北東アジア総責任者などを歴任した佐々木靖氏がアジア・パシフィック会長に就任したと発表した。同職に日本人が就任するのはBCGの60年を超える歴史の中で初めて。
コンサル業界は好況に沸く一方、新興勢の台頭など競争も激しくなってきている。同7月にBCGはグローバルにおいて、ガザ住民の強制移住を正当化する人道支援の不正関与を報じられ、企業の倫理と社会的責任も問われている。これからのかじ取りをどう担うのか。佐々木氏に聞いた。

――アジア・パシフィック会長に日本人が初就任したことの意義はどこにあるのでしょうか。

今回の就任は、日本市場の重要性がグローバルで認められたことが背景にある。日本法人は世界第2の拠点として1966年に設立され、長年にわたり安定成長を遂げてきた。売り上げの実額は開示していないが、2000年を起点にすると、安定して年率10~15%の成長を続けている。他国と比較して突出した伸びではないが、コンスタントに伸びていることが特徴だ。

従業員1200人という現在の規模で2桁成長を維持している点は、特筆すべきことだろう。人材の採用も売り上げの伸びと同じペースで拡大しているが、人材のクオリティ維持には気を付けている。年率20%といった急激な売り上げ成長は難しいので、無理な規模の拡大は行わないようにしている。

――成長の要因をどのように分析していますか。

顧客側の変化で言うと、日本企業がグローバル化や異業種への対応、デジタルやAI(人工知能)といった新たな領域への挑戦といった課題に直面するようになったことが大きい。従来の事業運営にはなかった「元々持ってない筋肉を使わなきゃいけない」状況が常態化している。こうした自社だけでは解決できない問いに対して、顧客企業は外部の専門家の力を活用することへの躊躇がなくなり、コンサルティングへの需要が大きく高まった。

コンサルティング業界側の変化としては、業界自体が産業として成熟し、新卒学生を一から育てたり、他業種からの中途採用者をコンサルタントとして育成したりできる体制が整ってきている。これにより、高まる顧客側の需要に対して質の高い人材を供給できるようになった。

かつてはコンサルティングファーム側に新卒学生をゼロから育てる自信や体制が不足していたが、現在は新卒採用から育成まで一貫して行えるようになった。キャリア採用においても、終身雇用モデルが変化し、キャリアアップを目指して転職することは一般的だ。多様な業界経験を持つ人材がコンサルティング業界に流入しやすくなっている。

成長ドライバーはAIによる企業変革

――直近における最も大きな成長ドライバーは何ですか。

AIによる企業変革だ。BCGは、AIを活用した企業変革を攻めと守りの両面から支援している。守りにおいては、人手不足が進む中でAIを用いて従業員が行っていた業務を代替し、より効率的な人材活用を促す。コールセンターの無人化などによって創出された人材は、より価値の高い仕事に再配置することが可能になる。

攻めについては、営業活動のように従来は人の経験や勘に頼りがちだった領域で、AIを活用して生産性を向上させる。顧客データや過去の成功事例をデータベース化し、AIが次に訪問すべき顧客や効果的な提案内容を示すことで、営業の成果を高めることができる。

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