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ライオン社長が宣言、「量を追う発想と決別し、高付加価値の商品で戦う」、大胆に取り組む構造改革の進捗と今後の課題とは?

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竹森征之/たけもり・まさゆき 1970年生まれ。1993年中央大学商学部卒業後、ライオン入社。ファブリックケア事業部長などを経て、2021年執行役員、2023年社長執行役員・最高執行責任者(COO)。2024年3月より社長執行役員・CEO(最高経営責任者)(撮影:尾形文繁)
日用品大手のライオン。ドリンク剤や外用消炎鎮痛剤などの事業を次々に譲渡し、一般用消費財のSKU(商品のアイテム数)については2027年度までに3割減らす方針だ。大胆な構造改革に着手する一方で、国内は少子高齢化を背景に市場が先細る懸念もある。今後どのような成長戦略を展開していくのか、竹森征之社長に聞いた。


――SKU削減の方針を打ち出しています。進捗は?

ドリンク剤などブランドの譲渡といったメリハリを効かせたことを昨年からずっとやってきた。2025年12月期の上期(1月~6月期)が終わり、これから成長していくための基礎体力が十分についてきたと感じている。

1SKUあたりの通期売上高は対前年で約1割、利益は約3割向上する見通しだ。SKUを削減することによって物流費や倉庫費用などの管理コストも削減できる。2025年上期では、前年同期比で6億円の改善効果が出た。

目先の成長だけをみると、量を追ってしまう。しかし、人口が減る現状を考えると、大量生産・大量消費では絶対に長く続かない。高価格で付加価値のある商品、つまり利幅が取りやすい商品を追い、それ以外のものとはメリハリをつける。

従来のマーケティングから脱却する

――2023年4月に発売した柔軟剤「ソフラン エアリス」の販売をわずか2年で終了しました。洗濯後の防臭など「機能性」重視の柔軟剤が多い中で、洗濯中の時間経過で香りが変化するよう設計された商品でした。期待された大型商品の早過ぎる撤退に驚きました。

量を取るマーケティングを施行したにもかかわらず、ブランドを育成することができなかった。一定数買っていただけるお客様がいたが、我々が目指している規模に育てることができなかった。

最大の教訓は、販売数量を大規模に獲得しにいく、旧来のマーケティングから脱却しなければならないということ。

ホームケア事業(洗剤・柔軟剤など)は典型的な装置産業だ。大規模な工場設備を持ち、大量に生産・販売すればするほど利益が上がるため、競合とシェアを奪い合う「量」を追求する戦い方を長年続けてきた。

しかし、今後の市場環境、特に当社の市場ポジションを踏まえると、その戦略はもはや得策ではない。これまで通りの大量生産・大量消費を前提としたビジネスモデルでは、競合のビッグプレーヤーに勝つことは困難である。

――質を追うということですね?

ライオンがホームケア事業から撤退することは絶対にないが、我々は量を追う発想と決別し、「差別化された価値」の提供で戦う。

例えば、水を極力使わない洗濯という習慣の提案を実現する「アクロンやさしさプレミアム」などを展開している。我々が目指すのは、全ての人に向けた商品ではなく、一部のお客様に「これがないと困る」と愛される商品だ。

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