八潮市の陥没が暗示する「流域下水道」の時限爆弾 陥没復旧を長期化させる水との闘い【後編】

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公共下水道工事 小口径推進工事の立坑用土留(写真:鬼瓦 龍太郎/PIXTA)

前編で解説したように、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、現場に集まる水の量が多く、復旧工事の長期化が予想される。現場近辺は内水氾濫(都市型水害)が発生しやすい地域でもあり、夏場にゲリラ豪雨が頻発すれば広範なエリアで2次的な被害が拡大する可能性も否定できない。

それにしても、なぜ今回の事故は9市3町の約120万人という多くの住民に影響を及ぼしたのか。そこには効率化を追い求めた先の“人災”という側面も見え隠れする。

なぜ120万人に影響が及んだのか

今回の事故は、中川流域下水道の幹線で発生した。流域下水道とは、複数の市町村の生活排水を1カ所に集めて処理するものだ。

下水は、下水処理場に向かって傾斜のついた下水道管の中を流れる。陥没現場は下水処理場に近いため、太い管路(内径4.75メートル)の中を大量の水がかなりの速さで流れている。これはまるで、中川流域の下にもう1つ人工的な中川流域があるようなものだ。

流域下水道は「広域で効率的な処理ができる」などのメリットがある一方、一度トラブルが発生すると「影響が広範囲に及ぶ」というデメリットもあることを事故が浮き彫りにした。実際、中川流域下水道を使用する120万人に節水要請が出された(2月12日12時から解除)。

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