
横浜市の本社ビル内に、生産ラインのプラットフォームを有する(撮影:大澤 誠)
半導体や家電など日本の電機産業は凋落の歴史をたどったが、電子部品は高い競争力を保ち、日本勢が世界生産額の3割超を占める。その強さの源にあるのが独自の経営戦略だ。村田製作所、TDK、ミネベアミツミ――。本特集では彼らの流儀のエッセンスをお届けする。
「明日もう一度、15分だけ時間をください」。2018年の末ごろ、ヒロセ電機の設計担当者はそう懇願した。場所は中国の車載向けバッテリー大手、X社(仮名)の会議室。新型コネクターのプレゼンに訪れ、「却下」を言い渡された直後だった。
ヒロセ電機は、この案件をどうしても取りたかった。EV(電気自動車)の発展とともに台頭したX社には黎明期から食い込んだ。バッテリーの面積を少しでも増やせるよう薄型のコネクターを造り、採用競争に勝った。
このように顧客の課題を「待ち伏せ」で解決する戦略に特化し、同社はコネクター専業ながら、直近30年間の平均営業利益率は26%。売上高の新製品比率3割を掲げ、技術力を武器に高付加価値品を生み出してきた。

だが、X社の設計思想が移ろい、薄さより横幅の短さを重視するようになると、いち早く代替案を示した競合にシェアを奪われた。得意分野で逆転を許したのは、看過できる事態ではなかった。
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