
齋藤 昇(さいとう・のぼる)/TDK社長。1966年生まれ、三重県出身。同志社大学法学部卒業後、89年にTDK入社。主に海外での営業畑を歩み、常務執行役員、電子部品営業本部長、センサシステムズビジネスカンパニーCEOなどを経て2022年4月に社長執行役員、同年6月から代表取締役(撮影:尾形文繁)
半導体や家電など日本の電機産業は凋落の歴史をたどったが、電子部品は高い競争力を保ち、日本勢が世界生産額の3割超を占める。その強さの源にあるのが独自の経営戦略だ。村田製作所、TDK、ミネベアミツミ――。本特集では彼らの流儀のエッセンスをお届けする。
カセットテープ、磁気ヘッド、小型2次電池。TDKは祖業のフェライト(磁性材料)加工をベースに、時代に合わせて主力事業を入れ替えてきた。それを可能にする社風やこれからの変革の方向性について、齋藤昇社長に聞いた。
ベンチャー精神が根付いている
──事業の取捨選択には決断力が必要です。歴代の経営陣がそれを実行できたのはなぜでしょう。
ベンチャー精神が文化として根付いているからだ。創業者の故・齋藤憲三(注:齋藤社長と血縁関係はない)は連続起業家で「2勝98敗の男」と呼ばれた。その1勝がTDK。新しいものはいつか必ず古くなる。連続した流れの中でつねに挑戦を続ける。もし失敗しても、何か学びを得ればよい。
この意識が代々受け継がれてきた。当社は今年12月で創業90周年を迎えるが、マインドセットが変わらないのはユニークな点だろう。経営陣だけの話ではない。私が「チームメンバー」と呼ぶ従業員も同じだ。約10万人のうち8割程度がM&A(合併・買収)で仲間になったが、彼らにも浸透している。
──TDKの文化を齋藤社長自身はどのように体得したのですか。
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