《若手記者・スタンフォード留学記 4》保守派の愛国心、リベラル派の愛国心
「私はこの国に恋に落ちた」
「私は、生きている限り、この国のために戦う」
「もはや私は私自身のものではない。私は、アメリカのものだ。」
9月4日の共和党・全国党大会で行われたジョン・マケイン氏のスピーチ。それは、マケイン氏による「アメリカへの愛の告白」といってもいいような、濃密な58分間でした。
言葉で愛を語るのは誰にでもできます。ただ、マケイン氏の場合、海軍士官として参加したベトナム戦争で、捕虜になりながら、拷問に耐え、国のために尽くしたという武勇伝があるだけに、言葉の説得力が違います。彼は、演説中に「FIGHT」という単語を計25回使っていましたが、「戦う」という言葉がこれだけ似合う人は他にいません。テレビで観戦している私のような人間にも、マケイン氏の愛国心の強さがひしひしと伝わってきました。
もちろん、オバマ氏も負けていません。8月28日のスピーチでは、「私はアメリカを愛している」という言葉がたびたび登場していました。アメリカの大統領選は、政策のみならず、愛国心の強さを競うレースでもあるわけです。
ただ、2人のスピーチを聞いてみると、両候補の語る愛国心のニュアンスが少しばかり異なるように感じました。「2人の愛国心はどう違うのだろうか?」そう考えていたときに思い出したのが、3ヶ月前に読んだ「TIME」の記事です。
保守派の愛国心、リベラル派の愛国心
その記事のタイトルは「新しい愛国心(The New Patriotism)」(6月26日号)。この記事によると、保守派(共和党)とリベラル派(民主党)の愛国心の違いは次のようにまとめられます。
保守派の愛国心:過去志向。愛国心とは偉大なる過去からの継承である。われわれは祖先の行いを尊重すべきであり、過去を尊重しないことは、自分自身をも否定することになる。
リベラル派の愛国心:未来志向。過去は尊敬するものではなく、乗り越えるべきもの。愛国心とは、今の現実と、アメリカという国の理想(民主主義、平等、法の支配)とのギャップを埋めるために闘うことである。
この保守派、リベラル派の愛国心を、マケイン、オバマの両候補は見事なまでに体現しています。
そもそも、マケイン家は、祖父、父親ともに海軍の大将を勤めた家系。祖先と同じ職業に就き、国家のために尽くし続けてきたというマケイン氏の人生は、保守派の愛国心をくすぶるのに十分な経歴です。
一方のオバマ氏にとって、黒人差別が合法であった過去のアメリカは、決して誇るべきものではありません。しかし、オバマ氏が大統領に上り詰めれば、アメリカはより開かれた平等な社会となったことを示すことができる。つまり、リベラル派の理想にまた一歩近づくことができるわけです。
金持ちになると、共和党に流れていく
周りの学生を見ていると、カリフォルニア州は民主党の票田ということもあり、リベラル派が優勢です。とくに、1960年代のヒッピー運動を生んだカリフォルニア大学バークレー校は、リベラル派の聖地といってもいい存在です。実際、私の知っているバークレー出身のアメリカ人は、全員がリベラル派です。