相互関税の名の下に輸入関税を課したアメリカのドナルド・トランプ大統領は間違いなく保護主義だろう。しかし、そのトランプを批判する欧州連合(EU)が、自らをまるで「自由主義の旗手」であるかのように位置付けているのは、欺瞞ではないだろうか。
なぜなら、そもそも保護主義の性格が強いのはEUのほうだからだ。それを再認識させる法案を、EUの執行部局である欧州委員会は3月4日に発表した。
法案名は、「産業促進法(IAA)」。欧州委員会はこの法案で、公共調達の際にEU域内製品の優遇を図ることを提言している。
国産品優遇に加え、外資系の技術移転や雇用創出を促す
同時に欧州委員会、加盟国政府が企業に対して、研究・開発の促進を目的に補助金を給付する際も、EU域内での生産を念頭に置いた企業を優先すると提案している。典型的な国産品(EU域内製品)優遇策だ。
欧州委員会は、鉄鋼やアルミニウム、セメントといった基礎的な素材に加えて、風力タービンや電解装置、電気自動車(EV)といったEUが強くこだる脱炭素関連を戦略分野と定める。そして、この分野では、モノごとに一定の域内製品の調達比率を定めることを提言する。重要なのは域内での生産であり、その担い手が外資系企業であることには問題がない。
一方、戦略分野に対する対内直接投資(FDI)に関しても、技術移転や雇用創出の義務を課す。一連の取り組みを通じ、欧州委員会はEUの製造業の底上げを目指そうとしている。
欧州委員会はIAAの中で、EUの域内総生産(GDP)に占める製造業の割合を2024年の14.3%から25年までに20%に引き上げることを目標にしている。
今後、IAAはトリローグ(三者対話)のプロセスに入る。つまり、欧州委員会の手を離れ、欧州議会と閣僚理事会による審議と修正を経て、最終的に発効されることになる。
一連の域内製品の優遇策は、競争力の高い中国製品を念頭に置いたものだ。同時に、中国から域内にFDIを引き寄せ、それを雇用につなげようとする思惑も見え隠れする。まさに、保護主義そのものである。






















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