《若手記者・スタンフォード留学記 23》アメリカで分かった中国人とのつきあい方

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1月26日は、太陰暦の1月1日、旧正月でした。中国(というより日本以外の東アジア)では新年といえば、新暦ではなく旧正月(春節)を祝います。

かく言う私も、旧正月を祝うため、親しくしている中国人の友人からディナーに招待してもらい、お互いの学生生活から日中若者論まで、怒涛のように語り合いました。第1回目中国人と一緒に観戦する北京オリンピックでも書きましたが、中国人と話すのは本当に面白い。

私がスタンフォードに来てから、一番変わったことの一つは、中国に対する興味が一気に盛り上がったことです。皮肉なことに、アメリカに留学に来ているのに、アメリカより中国への関心の方が高いという状況です。中国は、政治・経済・軍事の面で、これから何が起こるかわからなくて、融通無碍なところがありますから、最も議論や分析のしがいがあります。

今回は、13億人いる中国人の中のほんの僅かではありますが、スタンフォードで出会った中国人との付き合いの中で感じたことを、記してみたいと思います。

中国と中国人は違う

概して、私を含む日本人は、中国という“国家”に対するイメージを中国人にそのまま重ね合わせてしまいがちですが、それは必ずしも正しくない気がします。

たとえば、ナショナリズムが強烈で、日本が嫌いで、共産党の支持者で、「中国の経済成長が今後も続き、中国がアメリカを抜く超大国になる日も近い」と信じている若者には、ついぞ会ったことがありません。

まず、共産党が嫌いな人には多く会います。浙江省出身の友人の一人はこう憤ります。

「僕が小さい頃は、故郷は水が豊かで文化遺産に溢れていた。それなのに、共産党の経済優先の政策のせいで、歴史的な建造物は破壊され、今では工場だけの町になった。水は枯れ果て、再生は不可能。しかも、経済危機の煽りで、頼みの経済もボロボロ。冬休みに帰省したら、街に失業者があふれていた」

農村部出身の友人も、共産党に怒りを感じている一人です。

「農村出身の人間は、都市の人間に比べて、露骨に差別されている。(農民と都市住民とは戸籍が異なり、農民は、失業保険、年金、医療など多くの面で、都市住民と同等のサービスを受けることができない)。そうした制度を変えずに、共産党の人間は腐敗にまみれて、私腹を肥やしている。許せない」

過去30年、共産党が大きな経済成長をもたらしたことは確かですが、その過程で生まれた不満が、一部の国民の間でマグマのように鬱積しているわけです。

加えて、その中国の経済自体に関しても、悲観的な意見が多いことに驚きます。

私が「このペースだと、あと5年以内に中国のGDPは日本を抜くよ」というと、「そんなわけないだろ。冗談言わないでよ」という感じの返答が大半。友人の一人は「アメリカ人と話していると、なぜ中国の将来についてこんなに楽観的なのかわからない」と怪訝な顔をします。

実のところ、中国ブームに浮かれているのは、中国人”以外”の人だけで、中国人のほうが、アメリカ人や日本人よりも冷静に自国の経済を見ているのでしょう。

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