《若手記者・スタンフォード留学記13》ブッシュ大統領と意外と似てる? オバマ新大統領を性格診断してみると

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 「1861年以来続いてきた南北戦争が、今日、終わりを告げた」

ニューヨークタイムのコラムニスト、トーマス・フリードマンは、オバマ氏が当選を決めた次の日のコラムで、「黒人大統領誕生」の意義をこう表現しました。

オバマ氏が大統領に当選した11月4日。ここスタンフォードも大いに盛り上がっておりました。

カフェでは選挙速報を待つ多くの学生がテレビに群がり、普段は勉強熱心なクラスメイトも、授業そっちのけで、パソコンのニュースを見入っていました。当日は、スタンフォードの構内にも投票所が設けられていたのですが、学生新聞の調査によると、約9割の学生がオバマ氏に投票したそうです(サンプル数は147人)。

ここ数カ月は、アメリカ人と話すと、大統領選の話題になることが多かったのですが、「オバマ支持者であらずんば、インテリにあらず」といった雰囲気が充満しており、マケイン氏や副大統領候補のサラ・ペイリン氏の肩を持つのは、かなり勇気が要るという状況でした。

まあ、UCバークレーほどにないにしても、リベラル派が優勢なのはスタンフォードも同じです(第4回「保守派の愛国心、リベラル派の愛国心」)。学生新聞の統計によると、学生の中で、「自分はリベラル」と答えた人は58%に上り、中道の34%、保守の9%を大きく上回っていました。

私は、オバマ氏にもマケイン氏にも特に思い入れはありません。ただ、オバマVSマケインの討論をカフェで見ていると、オバマ氏が話すときは歓声を上げ、マケイン氏には「何言っているんだ、こいつ」といった感じの嘲笑を浴びせる学生たちの姿を見ていると、マケイン氏が気の毒になりました。

ただ、今回の選挙ばかりは、私がアメリカ人だったとしても、オバマ氏に投票したでしょう。その理由は、経済分野で、民主党側に有能な人材が多いからです。

マケイン氏の経済アドバイザーには、HP(ヒューレット・パッカード)の元CEOであるカーリー・フィオリーナ氏や、前イーベイCEOのメグ・ホイットマン氏が名を連ねていましたが、この2人ではあまりに頼りない。前者は、そもそも経営者として、大した実績を上げられず、事実上クビになった人物ですし、後者は経営者としての実績はあっても、マクロ経済は素人。金融危機を乗り越える手腕と、IT企業の経営者の手腕には違いがありすぎます。

それに比べて、オバマ陣営には、ポール・ボルガー元FRB議長、ロバート・ルービン元財務長官、ローレンス・サマーズ・元ハーバード大学学長、そして、伝説の投資家ウォーレン・バフェット氏など、経済・金融のプロ中のプロがいます。

ただ、オバマ氏にみなが熱狂している中、恐縮なのですが、私には彼の演説になぜ皆があれほど感動するのかがよくわかりません(苦笑)。英語だと、なんだか格好良く聞こえる演説ですが、言っていること自体はかなり単純です。これを日本語で日本の政治家が語ったら、かなり”浮く”でしょう。

まあ、こんな白けたことを言っている私は、かなり冷めた人間なのでしょうが(苦笑)、「理念の国」であるアメリカだからこそできる演説なのでしょう。いみじくも、オバマ氏がシカゴの演説で、「アメリカとは単なる個人の集まりではない」と語っていましたが、理想を語らなくなったら、アメリカはアメリカでなくなります(あまり理想を語りすぎるがために、言行に不一致が生じてしまい、ダブルススタンダードと揶揄されることになるのですが...)

政策や性格の点では、大嫌いなのですが、演説とディベートのうまさに話を絞れば、今回の大統領候補の中で、ヒラリー・クリントンがナンバーワンでしょう。

まあ、前置きが長くなってしまいましたが、今回は、オバマ氏はどんな大統領となるかを、過去の大統領との比較で考えてみたいと思います。

意外と似ている、オバマとブッシュ

アメリカの大統領を分類する際に、よく使われるフレームワークがあります。

それは、著名な外交評論家であるウォーター・ラッセル・ミード氏が、著書の『SPECIAL PROVIDENCE(特別な摂理)』(未邦訳)で紹介しているもので、歴史上の政治家になぞらえて、アメリカの政治家のタイプを以下の4つに分けています。

1)ハミルトニアン(アレクサンダー・ハミルトン初代財務長官に由来)

定義:経済重視。アメリカ経済の繁栄を国内外で推進することが、外交の最優先事項。とりわけ、大企業との関係を大切にし、海外のマーケット拡大に励む。

例:セオドア・ルーズベルト(1901-1909)、ジョージ・H・W・ブッシュ(1989-1993)、ビル・クリントン(1994-2001)

2)ウィルソニアン(ウッドロー・ウィルソン第28代大統領に由来)

定義:理念重視。民主主義、法の支配など理念を世界に広げていくことが、アメリカの使命であり、国益にも適うと考える。ネオコン(新保守主義)は右派のウィルソニアン。

例:ジミー・カーター(1977-1981)、ジョージ・W・ブッシュ(第1期目)(2001-05)

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