ハーバード大学の学寮がここまで称賛される理由 日本人が知らない米リベラルアーツ教育の本質とは何か

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ハーバード大学周辺
全寮制で行われるリベラルアーツ教育の仕組みとは(写真:じゃぱねっと/PIXTA)
現在、学校教育の世界だけでなくビジネス社会においても「教養」がブームとなっている。そもそも「教養」とは何か。なぜ「教養」が必要なのか。
3万5000部のベストセラー『読書大全』の著者・堀内勉氏が、19歳でHLABを創業し、日本の学生へのレジデンシャル・リベラルアーツ教育のプログラムの提供、海外留学奨学金・先進的教育寮の企画・運営などを行っている小林亮介氏に、アメリカの名門大学の学寮制度やアメリカのリベラルアーツ教育の本質について話を聞いた。

堀内:私事になりますが、東洋経済新報社より刊行する予定で教養をテーマとした本を執筆していて、米英のリベラルアーツ教育と日本の教養教育との違いについて、いろいろな方に話をうかがっています。小林さんは、ハーバード大学とスタンフォード大学に留学経験をお持ちですが、アメリカのリベラルアーツ教育のよさはどこにあるとお考えでしょうか。

私が体験したリベラルアーツ教育の本質

小林:高校卒業後、私は一橋大学に半年間在籍した後、ハーバード大学に進学しました。学部時代に最も影響を受けたのは、全寮制で行われるリベラルアーツ教育の仕組みでした。このレジデンシャル(居住型)リベラルアーツと呼ばれる定義や仕組みが、日本と根本的に違うと感じ、後にスタンフォードの大学院でも学びました。

リベラルアーツは、ひとことで言えば、多様性を重んじ、異なる世界や価値観に触れることを通じて、社会に貢献しながら生きるための自由(=リベラル)な思考と一連の技術(=アーツ)を育む教育です。

日本では「教養」という訳語が与えられてしまったこともあり、幅広い知識の習得や、芸術・人文系の学問を指すという印象が強いかもしれません。しかし、歴史的には、算術や天文学など、理系の先端科学も含まれてきました。重要なのは、幅広い問いに触れ議論する中で、知的好奇心、批判的な思考、また論理的な分析といった、学び続ける基礎となる力を身につけることにあります。

ですから、単に受講科目の幅だけでなく、多様なバックグラウンドから集う学生が共同生活する中で起こる、日常的な他者との議論や気づきが極めて重視されています。異質なものに出会った際に拒絶するのではなく、価値観や経験の違いを新たな世界との出会いのきっかけとして、自分の学びや成長に変え、1+1が3にも4にもなっていくようなスキルセットを育てようとするのです。

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