バラバラの中国人を束ねる、イデオロギーは存在するのか?《若手記者・スタンフォード留学記 32》

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前回は、中国旅行の生活面にフォーカスして、その不満ぶりを披露してしまいましたが、今回はもうちょっと堅い話題にします。

今回の旅を通じて、個人的に最も興味をそそられたテーマは、今の中国を動かしているイデオロギーとは何か、中国の知識人・一般人の間では、どういう思想が有力なのか、という点です。

この疑問に対し、明確な答えを与えてくれたのが、中国人民大学国際関係学院副委員長の金燦栄氏でした(中国旅行からの帰国後に気づいたのですが、金氏は『文藝春秋』の2008年9月にて、櫻井よし子さんとチベット問題について激論を交わした人物でした)。

中国を覆う5つのイデオロギー

金氏がまず指摘したのは、「今の中国人にとって、お金こそが宗教であり、みなお金儲けのことしか考えていない」という厳然たる事実。巷間言われるように、中国共産党はすでにイデオロギーによって突き動かされている政党ではありません。経済成長こそが、その正統性を支えています。

ただその一方で、金氏は「10年、20年後には、今のお金一辺倒の流れが変わるチャンスが訪れるはずだ」とも予測していました。今の若者は、生まれたときからおカネが当たり前にある世代であり、お金から個人の権利に興味が移っている、というのがその理由です。

事実、現在の中国には、主に5つのイデオロギーが複雑に絡み合っているといいます。

1つ目は、経済第一主義。その名のとおり、経済をすべてに優先させ、ひたすら経済成長を追い求める姿勢です。高度成長期の日本に似ているかもしれません。

2つ目は、左翼。この陣営には、ソ連から引き継いだ”伝統的な左翼”と、欧米の留学経験者が推進する”新左翼”が存在するとのこと(中国版新左翼の詳細については、以下の記事が参考になります:New York Times, "China's New Leftist", October 15,2006)。日本で言うと、学生闘争時の団塊世代にやや近い思想でしょうか。
 
 3つ目は、伝統主義。”和諧社会”という中国政府が掲げるキャッチフレーズに象徴されるように、儒教など中国の伝統的な価値観を重視しようという立場です。日本では、『国家の品格』を崇める、日本の保守陣営がこのカテゴリーに近いかもしれません。

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