バラバラの中国人を束ねる、イデオロギーは存在するのか?《若手記者・スタンフォード留学記 32》

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 アメリカ人も中国人も、自己主張が強く、目上の人間にも遠慮するところがあまりない。中国人の友人によると、彼女の周りで日本人、韓国人と結婚した中国人女性は夫婦仲がうまくいかないことが多いのに対し、アメリカ人男性と結婚したケースでは、円満なことが多いそうです。

人見知りせずに、気軽に他人に話しかけるところも中国人とアメリカ人は似ています。

今回のわずか1週間の北京滞在でも、いろんなところで些細な出会いがありました。頤和園(いわえん)を観光していたら、「あなた日本人か」と70代後半のおばあちゃんが話しかけてきて、戦争中、日本軍に教えてもらったという「はとぽっぽ」を大きな声で歌ってくれたり、私に道を聞いてきたMBAの中国人の学生が、以前、日立の栃木工場で働いていたこともあり、地下鉄でずっと日本の話題で盛り上がったり、若者に人気のステーキハウスに入ったら、ウェイターの女の子が、日本語についていろいろ質問してきたりと、退屈する暇がありませんでした。

超エリートと、鼻くそをほじくる田舎者

ただ、フランスの人口学者エマニュエル・トッド氏のベストセラー『帝国以後』によると、中国はアメリカよりもロシアに似ているといいます。

簡単に要約すると、ロシア、中国、アラブ圏など、平等主義的な家族構造(例:長男、次男など兄弟間で遺産相続に差がない)を持つ国では、人間と諸民族を平等主義的に扱う傾向にある(普遍主義)。その一方、ドイツ、日本といった、非平等主義的な家族構造(例:長男が他の兄弟に対し強い権限を有する)を持つ国では、自民族中心主義に陥りやすい(差異主義)。それに対し、アメリカは、普遍主義と差異主義を組み合わせてできた特殊な国として位置づけられています。

中国が他民族に対し寛大かどうかという点では、現実と照らしあわすと、疑問な点も多々あります。チベットの弾圧や、サッカーアジアカップの際の反日運動のみならず、歴史的にも、義和団事件など、中国の外国嫌いのメンタリティーが目立つ部分はあります。

ただし、日本人と比べれば、中国人には、自民族中心主義的な傾向は薄いように思います。たとえば、自身の国籍に対する拘りや、外国人に対する警戒感は、日本人よりは少ないように感じます。

今回、中国人のクラスメイトにこの話題を振ってみると、彼女自身は、国籍を変更することはありえない、と前置きしながらも、一つエピソードを教えてくれました。彼女の彼氏(スタンフォードの博士課程の学生)が中国からアメリカ留学を決めたとき、両親にこう言われたといいます。「アメリカに行ったら、黒人以外であれば、どの人種と結婚してもいいわよ」と。

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