バラバラの中国人を束ねる、イデオロギーは存在するのか?《若手記者・スタンフォード留学記 32》

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 4つ目は、ポスト・モダニズム。環境問題やフェミニズムをことさら強調する一派です。日本で言うと、田嶋陽子さんのような感じでしょうか。

そして、5つ目が、西欧型のリベラリズムです。カリフォルニア、ニューヨークなど民主党の地盤となる州で支配的な思想です。アメリカの一流大学を出た人間の多数派は、リベラリズムを信奉しています。

こうした5つのイデオロギーが交錯する今の中国の状況は、アメリカの思想を取り巻く環境よりも複雑である、と金氏は語っていました。

私も含めて外国人は、中国を突き動かすイデオロギーを、”拝金主義”や”独裁主義”といった言葉で一刀両断にしがちですが、その奥に潜むより詳細なイデオロギー分布を頭に入れておくと、中国の政治勢力や言論の動向をより正確に把握することができるでしょう。

中国人とアメリカ人は似ているか?

こうしたイデオロギーの分裂状況は、”経済成長”という大目標が達成されている限り、深刻にはならないでしょう。しかしながら、いったん、経済成長が止まると、暴動リスクが高まるだけでなく、イデオロギー間、そして、各イデオロギーを信奉する政治勢力間の摩擦も先鋭化する公算大です。

かつて、孫文が「中国は砂の民族である」と言い、中国人の団結力の無さを嘆いたのは有名な話です。

基本的に、中国は、国民国家として国民が一致団結した経験に極めて乏しい国です。四川大地震の際に、若者の多くがボランティアに駆けつけたことから、中国人民にも国民意識が芽生えているとの見解もありますが、「そもそも中国は国民国家なのか」ということ自体が、なかなかに議論が分かれるところです。

中国のように、50以上の少数民族を抱える国をどうまとめていくかは、民族の多様性が少なく、島国で同じ言葉を話す日本人には到底理解し得ない難業でしょう。

とくに、中国の団結を難しくしていると思われる要素の一つは、その国民性です。

今回、金氏も、日本人との比較で、「中国人は日本人よりもよっぽど、個人主義的で、権威主義的でなく、アメリカと相性がいい」と言っていましたが、この主張には確かにうなずくところがあります。

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