【産業天気図・2009年前半~後半】産業界に降り続く雨、雨、雨--。年度後半は雨足弱まるが、予断許さぬ状況
日本産業界は依然、梅雨まっただ中にある。
2009年度の天気予想は、前回(3月)予想に続いて、ズラリと雨マークが並んだ。昨秋のリーマンショック以降の各産業での需要激減の状況はいまだ続いており、「会社四季報」記者の見立てによると、09年度前半も豪雨は止みそうにない。後半については、前回予想より若干「曇り」へ修正された業界が増えたものの、いずれも08年度後半~09年度前半の最悪期に比べれば「マシ」という程度で、本格的な業績回復にはまだ時間がかかりそうだとの認識が改めて強まったといえるだろう。
今回から、「雨」の状況をより細分化するために、「土砂降り」の項目を加えた。“平常時”に比べて著しく業界や関連企業の状況や業績が悪化していることを示す天気だが、まさにその「土砂降り」状況に陥ったままなのが「自動車」だ。4月末のクライスラーに続き、6月初旬にはゼネラル・モーターズ(GM)がついに米連邦破産法11条の適用を申請。米国ビックスリーの相次ぐ破たんの余波によって、今後は主力の米国市場で一段と消費が冷え込む懸念が強まっている。
「人材サービス」も「土砂降り」状態。従来の「自動車」や「電気」向け製造派遣だけではなく、技術や金融向けなどの事務系派遣までが大苦戦に追い込まれている。
激しい雨が降り続く中で、若干ながら見通しが改善してきた業界もある。たとえば、「化学」は前回の前半が「雨」、後半が「曇り」の予想から、今回はいずれも「曇り」に改善。「精密機器」や「電子部品」、「海運」、「証券」なども、09年度後半については「雨」→「曇り」と、天気はやや回復へ向かいそうだ。たとえば「精密機器」では、デジカメの在庫調整が一巡し、需要も底打ちしたとの期待感が高まっているほか、「電子部品」でも、携帯電話や一部家電向けの需要が上向いてきた、という見方が浮上している。
ただし、これらはあくまで「これ以上悪くなることはない」といったレベルの話で、本格的な需要回復となると話は別だ。少しでも悪材料があれば需要が再び落ち込むリスクはくすぶっており、先行きは依然不透明といっていい。
「底打ちの兆しは出てきた」という見方が出ている業界でも、「建設業」や「住宅・マンション」のように、前半・後半とも依然「雨」と、予想を引き上げるほどの回復力が見られなかったり、大きな不安要素が残っていたりする業界もある。「曇り」へ予想が改善した業界でも、予断は許さないという点は同じだろう。
一方、不況が思わぬ追い風となっている業界もある。たとえば、「食品」は外食をせずに家で食事をする「内食回帰」の流れに乗り、安価かつ手軽に調理ができるレトルト食品などが売れている。天気予想も、前回の「雨」予想から、「曇り」予想へと修正した。外食も、日本マクドナルドホールディングス<2702>など、ファストフード業態は相変わらず好調。加えて、燃料費や原材料費などが前09年3月期から一服することで、主要企業のコスト負担もやわらいでおり、年度後半に関しては前回の「雨」から「曇り」へと見通しが改善した。
09年度いっぱいは厳しい状況が続くなかで、企業は引き続きコスト削減だけでなく、事業の集中と選択や、新たな技術やサービスの開発などのイノベーションが求められる。「雨降って地固まる」との言葉どおり、来期以降業績が回復するかどうかは、今期打ち出す施策がカギを握ることになりそうだ。
主要業種の天気予報図 (業種名をクリックすると各記事にジャンプします) |
業種名 | 天気図 | |
09年4月~9月 | 09年10月~10年3月 | |
建設 | ||
工作機械 | ||
造船/重機 | ||
海運 | ||
空運 | ||
鉄道/バス | ||
パルプ/紙 | ||
石油/石炭製品 | ||
化学 | ||
ガラス/土石製品 | ||
鉄鋼 | ||
非鉄金属 | ||
半導体 | ||
電子部品 | ||
精密機器 | ||
ソフト/サービス | ||
家電/AV | ||
情報/通信 | ||
放送/広告 | ||
食品/飲料 | ||
医薬品 | ||
自動車 | ||
百貨店 | ||
スーパー/コンビニ |
(スーパー) |
(スーパー) |
損害保険 | ||
外食 | ||
住宅/マンション | ||
銀行 | ||
証券 | ||
人材サービス |
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