【産業天気図・銀行業】収益細り、黒字でも利益は低位、与信費用にも不安

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

銀行業界は、2009年度も年間を通じて悪環境が続き、前半、後半とも「雨」が止みそうにない。

08年度の決算は、上場地域銀行87行のうち、47行が赤字という事態に陥った。公的資金の申請、あるいは申請を表明する銀行も相次いだ。大手行も3メガバンクグループと中央三井トラスト・ホールディングス<8309>、みずほ信託銀行<8404>、新生銀行<8303>、あおぞら銀行<8304>が軒並み赤字となった。

09年度はどうか。08年度の赤字の主因は有価証券の減損と与信費用(貸倒引当金、貸倒償却等)の2つであった。今年度は有価証券の減損については、株価次第ではあるものの、日経平均株価が1万2525円から8109円まで下がった前期ほどは減損は発生しないものと見られる。地銀では貸出先が乏しく、投資信託やREIT、外債などの高利回り運用をしていた向きが多く、そうした有価証券での減損が目立ったが、これも、09年度の損失は減ると見られる。

ただし、与信費用のほうは、そうは簡単に減りそうにない。08年度の前半には不動産業界に向かっていた外資の資金が急速に撤収したことから、不動産・建設業界で資金繰り倒産、いわゆる突然死が相次いだ。09年度はそうした動きが一巡し、与信費用が減ると見込んでいる銀行も多い。しかし、景気の悪化が全業種に広がったことから、企業倒産は、保証協会や政府系金融機関などの公的な資金支援や財政出動にもかかわらず前年同月比では増加が続いている。そのため、与信費用は高止まりすると考えたほうがいい。
 
 さらに、事業会社で言えば売り上げに相当する粗利益そのものが減る方向にある。預金を預かって貸出か有価証券で運用するわけだが、政策金利が下がっているので、貸出利回りが下がる。調達側の預金利回りも下がるが、そもそも金利水準が低かったので、あまりメリットが無い。また、影響が大きいのが有価証券の利息・配当金が減っていることだ。

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