【産業天気図・百貨店】ついに業界売上高7兆円割れへ、消費低迷打開の決定打打ち出せず苦戦
09年4月~9月 | 09年10月~10年3月 |
百貨店業界は前回(09年3月)予想に引き続き、2009年度前半、後半とも「雨」になりそうだ。昨年9月のリーマン・ショックを機に、高額品や婦人服といった好採算品の不振が続いており、業界を取り巻く状況は厳しいままだ。
日本百貨店協会によると、09年4月の百貨店売上高は前年同月比で11・3%減。08年3月以来14カ月連続で前年割れ。3カ月連続で2ケタ減という厳しい状況が続く。商品別に見ると、いわゆる高額品(美術品・宝飾・貴金属)は26カ月、婦人服は22カ月連続で前年同月を割りこんでいる。高額品は株や不動産などの逆資産効果、衣料も低価格化の波が押し寄せており、百貨店には依然逆風が吹き荒れている。
気掛かりなのは、化粧品も5カ月連続、食料品も3カ月連続で前年割れとなるなど、消費者の買い控えが「日常生活密着型アイテム」にも及んでいる点。夏のボーナス減少に加え、雇用不安が続く中で、日常生活を切り詰める消費者の姿が浮かび上がってくる。
5月についても、定額給付金支給本格化→マイナス幅圧縮効果が期待されたものの、新型インフルエンザの影響が相殺。15カ月連続で前年割れ、4カ月連続の2ケタ減となのは確実な情勢だ。ここへ来て株高などで消費心理が以前よりも改善の兆しが見えているものの、消費押し上げ効果は限定的と見られる。
こうした中、三越伊勢丹ホールディングス<3099>、J.フロントリテイリング<3086>(大丸と松坂屋)高島屋<8233>&エイチ・ツー・オー リテイリング<8242>、ミレニアムリテイリング(セブン&アイホールディングス傘下、西武百貨店、そごうが主力、非上場)の4大グループは夏のバーゲン前倒しなど、さまざまな消費喚起策を打ち出すものの、利益増に結びつく決定打は打ち出せていない。各社とも広告宣伝費や庶務費など、店舗運営コスト削減を強化する構えだが、粗利益の減少を埋めきれるまでには至らず、今期も大幅営業減益を余儀なくされそうだ。
専門店業態に押され、08年に7兆3813億円だった百貨店市場は、今年は7兆円割れが確実。将来は5兆円台まで縮むという予測も現実味を帯びている。5月には最大手の三越伊勢丹HDが伊勢丹吉祥寺店閉店(10年3月)を発表。伊勢丹にとっては長年の懸案ではあったものの、同HDで「負け組」の三越ではなく従来「勝ち組」とされていた伊勢丹店舗の閉鎖だけに、業界を象徴する動きとして注目を集める。一方で来年秋の三越銀座店増床を皮切りに、大阪や博多など大都市圏ではむしろ競争は激化する。需要低迷下での各グループの戦略が改めて問われそうだ。
(福井 純)
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