【産業天気図・鉄道・バス】ビジネスや観光需要減退で中長距離の不振深刻化。流通、不動産も回復期待薄く雨模様続く

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

鉄道・バス業界の2009年度の見通しは、前・後半とも「雨」が続きそうだ。柱の鉄道ではビジネスや観光需要の減退を受けて、中長距離の不振が強まってきている。景気低迷に加えて、休日1000円の高速道路料金値下げや新型インフルエンザも一部では影響が出ているもようだ。前09年3月期業績の足を引っ張った流通やレジャーなど非運輸部門も大幅な回復は期待できない状況だ。

上場JR3社の今10年3月期業績は、軒並み減収減益が予想される。東海旅客鉄道<9022>は、ビジネス客主体の新幹線が前半特に厳しい。N700系集中投入による償却負担も業績の重しとなっている。東日本旅客鉄道<9020>も新幹線や在来線特急の低調が続きそう。単月の鉄道営業収入は昨年11月以来、連続して前年同月比を下回っており、6月8日に発表された5月分もマイナス8.5%と大きな落ち込みを記録した。駅ナカ物販と不動産賃貸の利益は続伸する公算だが、鉄道の不振を埋め合わせるには力不足だ。「東洋経済オンライン」では、上場JR3社の合算ベースの今期営業利益を前期比26%程度の減益と見込んでいる。

大手私鉄の業績見通しも芳しくない。「東洋経済オンライン」では私鉄上場大手13社合算ベースの10年3月期営業利益を同6~7%程度の減益と予想している。新幹線や在来線中長距離の不振が厳しいJR各社と異なって、運輸の旅客収入は各社とも横ばいから微増を維持する公算だ。ただ、京王電鉄<9008>や東武鉄道<9001>など企業年金運用利回りの悪化による退職給付費用が業績の足を引くケースが目立っている。非運輸部門では、一部に下期を中心に不動産販売の持ち直しを見込む会社もあるが、流通やレジャーでは厳しい状況が続く公算だ。

「東洋経済オンライン」の予想は、上場鉄道会社の営業利益の合算ベースで、10年3月期の前半は前年同期比で26%、後半は10%程度の営業減益を見込む。通期では20%程度の営業減益予想となる。なお、小田急電鉄<9007>など一部で増益を見込む会社もあるが、前期に百貨店の改装閉鎖や不動産棚卸損を計上していたなど個別要因によるところが大きい。業界全体としての業績見通しに明るさが出てくるのは、まだ先となりそうだ。

(水落 隆博)

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