【産業天気図・非鉄金属】国際価格回復で雨足弱まるが、実需回復まだ先で戦々恐々

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

昨年後半からの土砂降りもようやく雨足を弱めてきた。とはいえ、雲の切れ間はどこにもない。弱まったのは雨足だけで、2009年度年間を通じては引き続きじめじめした天気が続く。
 
 前09年3月期決算は各社大幅減益もしくは赤字転落に見舞われた。要因は大きく2つ。一つは自動車や鉄鋼、エレクトロニクス業界の減産による需要の減退。もう一つは銅やニッケル、亜鉛などの国際価格の急落だ。たとえば前期に675億円という創業以来の巨額最終損失を出した三井金属<5706>は、今年9月までにグループ人員を4000人削減する。不振の理由は、世界最大手である自動車用ドアロック事業とエレクトロニクス業界向けのTAB、COFの大不振。これに加えて金属価格の急落などで約200億円もの在庫評価損に見舞われた。これは他の大手も同様に、各社100億~200億円規模の在庫評価損を計上し、さらに為替や販売価格など他の「相場要因」まで含めると、住友金属鉱山<5713>のように1250億円もの影響を受けたところもある。
 
 足元では金属価格は上昇基調にある。WTI同様、LME価格も昨年12月に大底を打ち、銅は1トン3000ドルを割り込んだ水準から足元4500ドルを回復するなど50%以上上昇した(ちなみに、この価格でも海外鉱山会社は収支トントンと言われる)。こうして見ると確かに雨足は弱まったかに見えるが、問題はこの価格回復が実際に実需に裏打ちされたものかどうかだ。三井金属は今10年3月期、自動車用ドアロック事業で工場の拠点集約を進めるなど合理化策に専念し、通期でも営業黒字浮上する公算。住友金属鉱山も電子機能性材料が原燃料費削減などで営業利益は底入れする見通しだが、いずれも実需回復からはほど遠い。自動車業界や鉄鋼業界で減産緩和の動きが出始めたのは追い風だが、これに加えてエレクトロニクス業界がどこまで回復するかが大きなカギの一つといっていい。 

(山本 隆行)

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