【産業天気図・住宅/マンション】一部都心好立地物件に回復の兆しあるが、本格回復には要時間
09年4月~9月 | 09年10月~10年3月 |
住宅/マンションの天気見通しは09年度前半、後半を通じて「雨」だ。一部都心物件を中心に回復の兆しが見られるものの、依然不安材料も多く残っており底打ちとは言い切れない状況だ。
年明け以降、マンション販売の現場には来場者の増加が続いている。GW明けに売り出された野村不動産<3231>の「プラウド宮崎台」(神奈川県・川崎市)は「久しぶりに即日完売した」(IR担当者)と言う。また、大京<8840>でも「『たまプラーザ美しが丘』(神奈川県・横浜市)は坪300万円を超える物件だが、『200年住宅』認定物件でもあり、1期28戸がほぼ完売」(同)と言う。こうした比較的高く好立地の物件が売れ出したことは、昨年後半のリーマンショック以降では久しぶりの明るいニュースだ。徐々にだが、市場に底入れ感が出始めているようだ。
実際、不動産各社の今10年3月期業績はは前期までの大幅な棚卸資産評価損の計上もあり、好転する見通し。たとえば、マンション専業大手の大京の場合、今期のマンション販売部門の営業利益について、前期は大幅な棚卸資産評価損の計上で504億円の赤字だったが、今期は「粗利率は低調だが、営業利益は収支均衡点近辺へ戻る」(IR担当者)としている。一方、総合不動産系では、最大手の三井不動産<8801>が5400戸(5206戸)、三菱地所<8802>も3200戸(前期2125戸)、野村不動産が4000戸(前期3135戸)といずれも販売を伸ばす計画をだしている。
しかし、都心の一部高額物件が売れ出していることをもって本格回復の兆しとみる向きはまだ少ない。それというのもマンション市場には依然、以下のような不確定要素が残っているためだ。(1)依然、購買層の賃金水準は低調で、契約までのリードタイムは短縮化していない。つまり、「来場者は多いが、売れ行きにスピード感が出ているほどではない」(業界関係者)。(2)年明け以降に販売が伸びている物件は値下げされた完成在庫が中心で、新規物件を売り出し始めているのは一部大手に限られる。(3)5月末に、ジョイント・コーポレーションが突然、会社更正法を申請したが、依然、金融機関の独立系マンション会社に対する融資姿勢は厳しく、ここから先も含め、マンショ業者数の減少傾向が続くと見られる--などだ。
不動産経済研究所が発表している今年のマンションの供給戸数は4・7万戸。前年の4・3万戸を多少上回る”底打ち予想”だが、上記の理由から未達の可能性も依然残っている。
(日暮 良一)
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