【産業天気図・損害保険】運用環境改善でも自動車保険など本業不振、業界再編でシェア争いに拍車
09年4月~9月 | 09年10月~10年3月 |
損保業界の2009年度は引き続き「雨」が続きそうだ。
前2009年3月期は保険料収入の減少傾向に加え、昨年9月以降のリーマンショック以降、運用環境の急激な悪化で有価証券評価損などの発生から、単体経常損益では東京海上日動(連結は赤字)を除く全社が赤字に転落した。最終損益ベースでは価格変動準備金の取り崩しで東京海上日動、三井住友海上、日本興和の3社は黒字をキープした。
今10年3月期は、運用環境の改善を見込んで、全社の経常黒字転換が予想されるが、本業の損保事業においては自動車保険など市場規模の縮小と競争激化が続くと予想される。この4月には三井住友海上とあいおい損保、ニッセイ同和(2社は合併)の統合、損保ジャパンと日本興和の経営統合が予定されており、損保業界の「3メガ体制」に向けて、3グループによる前哨戦が展開されそうだ。
09年3月期は主要損保9社(単体ベース)の正味収入保険料が減収となったが、保険引受利益は東京海上日動(東京海上HD<8766>傘下>、三井住友海上(三井住友海上HD<8725>)、あいおい<8761>、日本興亜、日新火災(東京海上HD傘下)が黒字、損保ジャパン<8755>、 ニッセイ同和<8759>、富士火災海上保険<8763>、共栄火災が赤字となった。主力の自動車保険の低迷に加え、自賠責の保険料率改定も大きく響いた。自動車保険は新車販売の減少と車両の小型化による単価下落が低迷の要因となっている。
単体の経常損益ベースでは東京海上日動を除く各社が赤字となったが、最大要因はリーマンショック以降の金融危機による株式や外国債券などの含み損の拡大。有価証券評価損は9社合計で約5000億円に上った。減損による評価損に拡大だけでなく、さらに利息配当収入の大幅減少が響いた。また、損保ジャパンは単体で最終赤字739億円となったが、本業の金融保証保険の損失だけで1479億円を計上したことも大きく響いた。
10年3月期は、こうした金融危機関連損失は大幅に減少、各社とも経常、最終とも黒字予想にある。単体ベースの単純合算で、3メガグループを比較してみると、東京海上日動は正味収入保険料0.5%減、三井住友・あいおい・ニッセイ同和は0.9%減、損保ジャパン・日本興亜は1.2%減と各グループとも減収予想にあるが、経常利益は東京海上日動が1200億円(前期696億円)、三井住友・あいおい・ニッセイ同和が560億円(同117億円の赤字)、損保ジャパン・日本興亜が770億円(同1567億円の赤字)と浮上してくる予想だ。
今後「3メガ体制」へ再編が進展する損保業界だが、損保ジャパンと日本興亜の経営統合については「まだ紆余曲折がありそうだ」(業界関係者)との声もある。自動車保険を中心にマーケットは縮小傾向にあり、シェア争いと同時に再編の動きから目が離せない。
(木村 秀哉)
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