【産業天気図・石油・石炭製品】石化製品健闘だが原油価格上昇が波乱要因、「晴れ間」は見えず

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予想天気
  09年4月~9月   09年10月~10年3月

2009年度の石油業界は「前半」と「後半」のいずれも「曇り」の天気となりそうだ。
 
 石油元売り各社の多くは在庫評価に総平均法を採用。期初の在庫額と期中の仕入額を足し合わせて平均する方法だ。原油価格の下落時には期初の割高な在庫が含まれるため売り上げ原価を押し上げ、評価損が発生する。このため、08年度は油価急落に伴って評価損が膨らんで各社の見かけの経常損益は大幅に悪化。赤字転落が相次いだ。09年度はこうした在庫評価の影響が大幅に好転、見かけの経常損益は黒字に浮上する見込みだ。

一方、在庫評価の影響を除いた「真水」ベースの利益の行方はきわめて流動的。業界最大手の新日本石油<5001>の実質経常利益は前期比約50%減の850億円と、期初段階で半減を見込む。セグメント別に見ると、石油化学製品事業の損益は黒字に転じるが、石油製品(石油精製・販売)事業と石油・天然ガス開発事業の利益減が足かせになる。

石化製品事業をめぐっては他社も同様に採算改善を想定。大手元売りのうち、新日石と同様に3月期決算会社のコスモ石油<5007>、新日鉱ホールディングス<5016>、出光興産<5019>の3社の同事業もそろって黒字に浮上する見通しだ。中国需要などを追い風に製品マージンが2月中旬前後から改善しており、09年度の収益の下支え役になりそう。

これに対して、資源開発事業と石油精製・販売事業の先行きは読み切れない。今のところ、資源開発事業については、原油価格が前年度の水準を下回ると見られるため、他の3社も減益を想定。石油精製・販売事業をめぐっては見方が分かれる。

だが、最近の原油価格上昇はこうした収益見通しの大きな変動要因になる可能性が高い。各社はいずれも09年度の業績計画の前提となる原油価格の水準を1バレル50ドル台に設定しているが、足元の油価は70ドルを上回る状況だ。

原油相場が今後、現水準近辺で推移すれば、資源開発事業の利益の上振れは必至と見られる。半面、石油精製・販売事業では精製に使う自家燃料のコスト低下がさほど見込めなくなってしまう。ジェット燃料など数カ月前の原油価格をベースに販売価格を決める油種では、油価上昇が続くと、調達原油価格との「逆ザヤ」が生じて利益を圧迫する。

石化製品事業もいったん上向き始めた世界景気が腰折れすれば再び、採算が悪化するリスクが残る。石油業界に「晴れ間」がのぞくタイミングを予測するにはあまりにも不透明要因が多い。

(松崎 泰弘)

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