ハーバードの授業が、泣くほど感動的な理由 海外MBAへの社費派遣は、本当に無駄なのか?

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毎回、友人たちや教授と濃い議論が重ね、自分をさらけ出すことによって、呉さんは、この授業で、どんどん「自分を客観的に見つめていった」という。

「周りや環境に流されるのではなく、自分の進む道は自分で死ぬほど考えて、あがきにあがいて、泥臭く切り開いていくしかないんだな、とあらためて思いました」 

“東北”を、ハーバードのケーススタディにする

2つのリーダーシップの授業を通じ、自分の夢を再確認し、自分の価値観を知った呉さん。彼が次に取り組んだのは、東北の被災地の今を世界に伝えることだ。

2013年1月、呉さんは、ハーバードのフィールドスタディの一環で、同級生30人とともに、日本の被災地を訪問した。目的は、東北の被災地の復興状況を、ハーバードビジネススクールのケースにして、伝えるため。30人で5つのケースを書くという、大きなプロジェクトだ。

「僕が留学したのは、2011年7月。震災直後に渡米してしまったので、復興のためのボランティア活動はほとんどできなかった。それがずっと心残りでした。ハーバードの学生としてできることは何か、と考えた末、ケースを書くことを思いつきました。ハーバードのケースにすれば、世界中のビジネススクールの教授や学生に読んでもらえます」

ハーバード生らと、岩手県立大船渡高校も訪問した

呉さんが取材したのは、宮城県石巻市雄勝町にある「株式会社OHガッツ」。震災後、漁師、水産業者、ボランティアなどで設立された会社で、新しい漁業のビジネスモデルを実践している。

雄勝町の海産物を定額で会員に通信販売したり、漁師になりたい若者に指導を行ったり、その活動は、世界中のメディアに取り上げられている。呉さんは、執筆のため、同社の経営陣はもちろんのこと、お客さんや支援者まで幅広く取材した(株式会社OHガッツについては、こちらの記事もご参照ください)。

取材して感じたのは、東北の抱えている問題は、いずれ日本全体の、そして世界全体の問題になるおそれがあるということだ。「高齢化」「過疎化」「労働力の流出」といった問題は、震災前からあった問題で、それが震災によって加速してしまった、という話を現地の人に聞いた。

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